兵庫・斎藤知事の逆転勝利に県職員「ゾッとする」百条委員会で対立深める県議は神戸最強の“サラブレッド”
まさかの大波乱だーー。 兵庫県議会の不信任決議案の可決を受け、自ら失職した出直し選挙で、斎藤元彦前知事が前尼崎市長の稲村和美氏、日本維新の党を離党した前参議院議員の清水貴之氏ら無所属の新人候補6人を破って再選を果たした。 【写真あり】再会した県職員にぎこちない笑顔を向ける斎藤知事 失職した9月30日、職員の見送りもなく退庁した斎藤“新”知事は、110万票以上の“民意”を携えて11月19日、兵庫県庁に戻った。 「元局長が作成した“パワハラ・おねだり告発文書”問題について、百条委員会や県の第三者調査委員会の結論を待たず、知事選まで進んでしまったのは、調査結果を待たずに県議会が全会一致で不信任決議案を可決したためです。 百条委員会は、知事選中は選挙への影響を考慮して秘密会になっていましたが、議事録が今後、公開され始め、斎藤知事の証言も再開されます。どちらも年度末までに調査結果の報告書をまとめる予定ですが、百条委員会は法的な拘束力はないにしろ、辞任勧告も可能です。まだまだ一波乱ありますよ」(県政担当記者) 斎藤知事の再選は、彼に不信任を突きつけた県議会への“逆不信任”ともいえる。劣勢に立たされた県議会の最後の希望は、百条委員会で委員長を務める奥谷謙一県議だ。 「11月18日に、百条委員会のメンバーのひとりである竹内英明県議が『一身上の都合』を理由に辞職しました。一部では“斎藤支持派”による誹謗中傷の影響では、と噂されていますね。実際、委員長を務める奥谷県議の自宅に対し、知事選候補者だったNHK党の立花孝志党首が街宣をかけたため、奥谷県議は家族を避難させたことを明らかにしています。 立花党首は選挙中、一貫して斎藤知事を支援するように動きました。とくに、亡くなった元局長のPCにあった“個人的なデータ”を争点にしていて、10月24、25日の百条委員会では、片山安孝前副知事が同データについてふれたところ、奥谷県議が職権で片山副知事を制した録音データも流出しています。 奥谷県議は、片山前副知事の発言が元局長のプライバシーにふれると判断したためですが、一部の斎藤知事支持派の間では、それが奥谷県議による“隠蔽”であると決めつけられています。いまや奥谷県議は、斎藤知事“追い落とし”の主犯のひとりかのように、名指しで批判されています。ただ、それでも強気のようで『再選は再選で別問題。百条委員会の筋は通していく』と周囲に話しているそうです」(同前) 奥谷県議は39歳、当選3回の県議だ。弁護士資格を持ち、百条委員会でも証人へ詰問調の問いかけが注目されたが、斎藤知事の再選でも強気を貫ける背景は、弁護士だからというだけではない。兵庫政界でも最強の“サラブレット”なのだ。地元関係者がこう明かす。 「実父は自民党衆院議員だった故・奥谷通氏。通氏の元妻は、経済同友会幹事で、安倍晋三元首相の私的応援団『四季の会』メンバーでもある人材派遣会社ザ・アール創業者の奥谷禮子(れいこ)氏です。親族も含めた関係者のほとんどが甲南大学卒という、いわゆる“神戸のボンボン”ですが、それだけ、地元の関係者とは密接です。選挙で落ちる心配もなく、斎藤知事が国政進出を考えているなら、大きなライバルになりうるでしょうね。県政全般を考慮すれば、斎藤知事は、本音では懐柔したいところでしょう。いずれにせよ、彼が今後は反・斎藤知事派を率いていくのではないでしょうか」 一方、知事不在の間も2025年度の予算編成に向けた準備を進めてきた県職員らにも、動揺が走っている。予算編成をするには知事の査定が必要で、斎藤知事はさっそく県職員と向き合うことになる。 「正直、ゾッとしていますよ。そもそも、県職員が回答したアンケートでは約4割が『パワハラを見聞きした』と回答しており、斎藤知事からすると、半数近くが“敵”なわけですから……。“おねだり疑惑”では、秘書広報室から詳細なお土産リストが提出されるなど、斎藤知事はごく近い県職員からの暴露も受けています。いまから関係修復ができると思えないし、元局長が懲戒された経緯を考えると不安です。 斎藤知事は選挙中、『あらためるべきはあらためる』、『生まれ変わる』と発言していますが、そもそも、例の告発文書がすべて“捏造”であると主張するなら、斎藤知事は何をどんな理由であらためるつもりなのか……」(県職員) 県議会では、不信任決議案が全会一致で可決したにもかかわらず、すでに“裏切り”が出ている。 「じつは、斎藤知事の側近だった元総務部長が最近、復帰しました。選挙中も県広報に対し、斎藤知事に不利なことが出ないよう、にらみを利かせていましたよ。『自分は副知事になる』と豪語していますが、副知事は県議会の同意が必要です。斎藤知事と政治的に対立できるのは県議会だけですが、斎藤知事の事務所で、すでに十数人の県議が目撃されています。“斎藤帝国”が復活するんじゃないかと不安視する県職員が多いですよ」(同前) 一方、98万票を得たものの、次点となった稲村氏が負った傷は深い。 「既成政党の推薦を受けずに、無所属候補として立候補した稲村さんの選対には、大手IT企業の幹部が責任者として入っていました。じつは、斎藤陣営がSNSを活用した選挙戦を仕掛けてくるのはわかっていたので、その対抗策をこの幹部が中心に練っていたんです。しかし、稲村さんのSNSアカウントが不可解な凍結を2回もされるなど、まったく効果がありませんでした。 中盤からは“空中戦”をやめて、街頭に出る“どぶ板戦術”に転換したわけですが、今度は立花党首や斎藤さんの支持者に先回りされていて、稲村さんはこれら“アンチ”越しに選挙活動をする羽目になっていました。あまりに情報が筒抜けで『内部にスパイがいるのではないか』という疑心暗鬼が、選対内部で生まれたほどです。稲村さんは2025年の参院選で、立憲民主党の公認を得て出馬するともいわれますが、ボロボロになってしまった陣営を立て直すのは、容易ではないでしょう」(前出・県西担当記者) 大きな禍根を残すことになった兵庫県知事選。まずは百条委員会での真相究明が待たれる。