長びくコロナ禍――現場から見える10代の困窮「必要なのは継続的な支援」
求められる支援策とは
いま困窮する10代の若者には、どのような緊急支援が求められるのか。東京都立大学「子ども・若者貧困研究センター」センター長・阿部彩教授はこう語る。 「コロナ禍ですべての人が経済的な損失を受けているように思われがちですが、そうではありません。なかには影響を受けた人もいますし、まったく受けていない人もいます。大切なのは、『生活困難』な人を支援することです」 2020年に実施された1人一律10万円給付の予算は12兆8803億円に上る。新たに議論されている子育て世代への一律給付金の予算額も2兆円といわれている。そんななか、阿部さんが危惧することがある。コロナ禍による巨額財政支出の反動で、国の財政緊縮が進むのではないかという点だ。 「このままでは、もともとあるセーフティーネット、つまり『生活保護』や『児童扶養手当』『児童手当』、さらに保育所などの福祉予算がカットされてしまわれかねません。これは今年度から始まるとも考えられています」
だからこそ阿部さんは、いま推し進めるべきは「すでにあるセーフティーネットを、もっとスムーズに誰もがしっかり使えるようにすること」と訴える。 「つまりコロナ禍に左右されない現行の福祉制度を、より現実に即した改良を進めるべきです。2020年以降、生活保護においては、車の非所持要件や親族への扶養照会の運用が見直されましたが、こういったことをさらに進めるべきです」 ひとり親家庭で暮らす子どもや困窮する学生への支援策としては、「児童扶養手当の支給は漏れなく行われるべきですし、低所得家庭の高校生や大学生への奨学金の拡充なども必要です」と語った。 コロナ禍で生活が激変した10代で、NPOなどの支援につながることができた若者たちは、氷山の一角にすぎない。 政府は、「18歳以下の子どもを対象にした10万円相当の給付」や「住民税非課税世帯への10万円給付」、「困窮学生への10万円給付」など、給付を巡って議論を進めている。評価する声もある一方、これらの施策には「本当に困窮している人に届く施策になっているのか」などの批判も少なくない。 これらの現金給付はあくまで一時的なもので、困窮している人たちを一定期間にわたって支援する制度ではない。彼らを支援するためには、中長期的なセーフティーネットとなる福祉制度の維持、ひいては改良と拡充が求められているのではないだろうか。