長びくコロナ禍――現場から見える10代の困窮「必要なのは継続的な支援」
もともと居酒屋で週3回のアルバイトをして月に4万~5万円の収入を得ていたが、緊急事態宣言で店は休業し、一気に収入が絶たれた由紀恵さん。入学した大学の学費を支払い、授業に使うパソコンを購入したばかりで、携帯代や教科書代も払えないほど困っていた。 そんな由紀恵さんの口座に現金1万円が振り込まれ、お米やレトルト食品など2週間分の食糧が詰まった段ボールが届いたのは6月のことだ。10代の若者を支援する認定NPO法人「D×P (ディーピー)」(大阪市)のLINEを使った進路相談サービス「ユキサキチャット」に由紀恵さんが連絡したことで、ビデオ面談を経てすぐに支援につながった。 「5月末に、Twitterを見た母から、『こんなんあるみたい』と現金と食糧の支援があることを教えてもらったんです。本当に助かりました。公立の高校から私大に入学したのですが、緊急事態宣言下でバイトが減ってしまって、次の月にはお給料が1円も入らない状況だったので、相談させていただきました」
母親は、証券会社で長年働いていたが、心臓病を患ったことをきっかけに退職。いまはパートで働いている。家は持ち家だが、母親の収入は税金や公共料金、2人分の食費などで消えてしまう。由紀恵さんは、私大の入学金や学費は、高校時代から自分がためてきたお金と奨学金でなるべく払うつもりだ。 親思いで自立心が強い由紀恵さんは、「これまで母親に頼ろうと考えたことはなかった」と話す。 「私には、母にお金を出してもらうっていう概念がないんです。もう働ける年齢だし、バイトして補っていけるところは補っていきたい。学費は、母のサポートも少しはありますけど、基本的には自分の奨学金から出そうと思っています」 10月からは、大学に通いながら週3回のアルバイトができるようになった。今月ようやくアルバイト代がもらえる予定だ。
「普段通りの日常が戻ってきました。少しは生活も楽になりそうです。でも、もしまた緊急事態宣言が出て収入が減って、もし学費をためることが難しくなったら……。そのときは、大学をやめて働く気持ちでいます。私はお母さんと一緒に暮らしていけたらそれだけで幸せなんです」 学費を払えなければ、大学をやめる――。由紀恵さんは表情を変えずに「仕方ないかな」と言った。