【コラム】ハリス氏必読、トランプ氏論破のコツ教えます-オブライエン
(ブルームバーグ): 2016年の大統領選挙を控えた2回目の候補者討論会。ドナルド・トランプ氏はヒラリー・クリントン氏に忠告した。自分が大統領になったら司法省による追及が待っているぞと。
「トランプ氏のような気性の持ち主が米国の法律を担っていないことに、心から安心する」とクリントン氏は返した。
トランプ氏はすかさず「それはあんたが刑務所に入るからだよ」と、ささやくような低い声で言い返した。ラスベガスのショーを取り仕切る司会者のような芝居じみた言い方は、たちまちその場にいた支持者の歓声と拍手を引き起こした。
討論会のセッティングはリアリティー番組のスターだったトランプ氏に有利だった。マイクは常に2人の音声を拾っており、生中継の会場には聴衆もいた。トランプ氏は舞台を自由に歩き回り、時にはクリントン氏のすぐ背後で同氏をにらみつける場面もあった(世論調査はクリントン氏が3回の討論会全てを制したとしていたが、実際の選挙はそうならなかった)。
このトランプ氏とハリス副大統領は10日夜、フィラデルフィアで討論する。しかしハリス氏が相手にするトランプ氏のパフォーマンスは、8年前とは異なる。マイクは常にオンではなく、聴衆もいない。回答も反論も2分に限定される。候補者はいずれも演壇を離れてはならない。
78歳のトランプ氏はこの8年間で老け込み、見た目にもそれが表れている。聴力は低下し、姿勢は前かがみになり、話し言葉も聞き取りにくいことが多い。何十年も前から思うままに言葉をまき散らしていた人が、最近では何かを聴衆に説明しようとして理解不能な言葉の羅列になってしまうようになった。
10月に60歳になるハリス氏が背負うのは、6月に行われたバイデン大統領とトランプ氏の討論会が有権者に残した記憶だ。バイデン氏の無残な様子が候補者交代につながり、米国はハリス対トランプという歴史的にも重大な大統領選挙を迎える。多くの有権者にとってハリス氏は未知の部分が多い。しかしハリス氏は本物のモメンタムを持ち合わせている。それはセレブを自負するトランプ氏がねたみ、恐れるカリスマ性とスター性だ。