なぜ日本の若者は韓国美容にハマり、K-POPスターに心酔するのか?
韓国では肌の色が白く均一であることが美しさの絶対条件
── メイクのお話が出ましたが、なぜ日本の女性がここまで韓国風のメイクにハマっていったのでしょうか。 齋藤 韓国風メイクが日本で流行ったひとつの背景は、やはり白肌です。本質的には、その人本来の肌色こそ美しいと考えるべきなのですが、韓国ではとにかく肌の色が白く、均一であることが美しさの絶対条件。肌の白さを際立たせるために、赤い口紅も流行りました。 一方、日本では色白願望がありながら、どこかで否定するベクトルが働いていたのです。コスメカウンターで自分の肌色よりも明るい色のファンデーションを選ぼうとすると「お客様はこちらの色です」と諭される。日本の美容業界では、長く「自分の肌色よりも明るい色を選んではいけない」と教えられてきたのです。ところが、韓国の女性たちは願望に忠実に明るい肌を追求している。それを取り入れてみた日本の女性たちが「やっぱりこっちの方がきれいじゃないか」と気づいて、韓国コスメやメイクにわっと飛びついたのです。 細かい話になりますが、最近日本では00番というファンデーションの色番が増えてきています。ファンデーションの色展開は、通常01、02、03番と段々トーンが暗くなっていきますが、01番よりも明るく、ほとんど黄みも赤みもない00番が日本のブランドでも新たに加わって、今とても売れているのです。
── なるほど。ある時期までは、美容の分野は日本が韓国を先導していたイメージがありますが、何かゲームチェンジが起きるような出来事があったのでしょうか。 齋藤 韓国では海外に向けてビューティ産業を売り込むために、国を挙げて盛り上げているのでレベルが違います。15年ほど前にも日本の化粧品業界へ参入しようと、韓国が日本のメディアを巻き込んで仕掛けてきたことがありました。でも、当時の日本はすでに美容大国として成熟していて、韓国コスメが入り込む隙がなかったのでなかなか成功せず、撤退したブランドもすごく多かった。 それでも政府が化粧品の研究開発費のサポートや、輸出がしやすい仕組みを作って、地道にバックアップし続けた結果、K-POPスターたちの影響もあって今は大ブームになっています。品質が良く安くて可愛いので、日本の女の子たちが一気に夢中になり、国内のコスメ業界もいま慌てている状況だと思います。 ── 韓国は映画産業にも手厚い支援をして、成功を治めていますよね。 齋藤 そうですね。アカデミー賞を獲った映画『パラサイト 半地下の家族』は、作品としての完成度はもちろんですが、ロビー活動の熱量もすごかったと聞きます。資金の投入もするけれど、それを結果に繋げるのが、韓国の凄いところかと思います。