なぜ日本の若者は韓国美容にハマり、K-POPスターに心酔するのか?
── ハイブランドのアンバサダーにK-POPスターが起用されている理由もそのあたりにあるのでしょうか。 齋藤 そうでしょうね。BTSがアメリカで大ヒットした理由は、欧米的な洗練を超えるようなセンスがあったから。彼らの世代は、幼い頃から世界で活躍するスターになることを意識して育てられているので、振る舞いやファッションも含め見事に洗練されていて、英語も堪能、グローバルな美意識も身につけている。日本の芸能界など飛び越え、マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンをお手本にして育ったから、同じアジア系である日本の若者たちも、韓国のスターに憧れるという図式になるのだと思います。
媚びないけれどセクシーで異性を魅了する「ガールクラッシュ」
── なるほど。K-POPアイドルが発端となった「女性が憧れるカッコいい女性像」である「ガールクラッシュ」スタイルも人気です。男性に媚びない強い女性像は、韓国に根付いているのでしょうか。 齋藤 おそらく本来は逆で、韓国での女性の地位は決して高くはなかったと思います。前々回のオリンピックでは、金メダルを取ったアーチェリーの韓国代表の女性選手が、ショートカットにしているだけで一部から「フェミニストだ」と批判されました。韓国では長い髪が女性の美しさの象徴とされていて、髪を短く切るという行為が女性らしさを放棄、つまり男性への反発ではないかという、おかしな議論が巻き起こったのです。
── たしかに韓国には映画やドラマの登場人物にしても、ショートカットの女性が少ない気がします。 齋藤 韓国は日本以上に家父長的な社会で、先ほども言ったように昔から“男は男らしく、女は女らしく”という考えが根強くあります。そのアンチテーゼとして「ガールクラッシュ」という媚びないスタイルが生まれ、女性たちに支持されたのではないでしょうか。 実は90年代の日本でも「媚びない」という言葉が、キーワードとして盛り上がったことがありました。眉は針金のように細く、口紅もネイルも黒々と、男性に媚びないビジュアルこそ価値が高いとされましたが、そのメイクがあまり女性をきれいには見せなかったので、結局は廃れてしまいました。現代の韓国での「ガールクラッシュ」は、媚びないけれど、実際はちゃんとセクシーで異性を魅了するスタイル。だから人気が続いているのだと思います。