すしやピザはどのようにして生まれたのか? 食べ物の意外な起源 チュロスやベーグルは?
シンプルな料理ほど、いろいろな文化の影響を受けやすい
食べ物の起源を突き止めるのは容易ではないし、論争になりがちな話題だ。ベーグルを例に挙げよう。最初にベーグルが作られたのは1610年のポーランドのクラクフだという説もあれば、17世紀後半のオーストリア、ウィーンが発祥だとする説、さらにはさかのぼって14世紀のドイツで生まれたオブワルザネクではないかとする説もある。 ギャラリー:絶対食べてみたい! 世界のパン8選 ある料理が世界に広がり、進化して名前も変わっていくとき、その料理は同じままなのだろうか。 ケチャップの場合はどうだろう。ケチャップは東南アジアの「ケ・ツィアプ」、つまり魚を発酵させて作った調味料が起源だ。これがヨーロッパに伝わると、英国の料理人は、発酵させた魚の代わりに酢とアンチョビを使って、同じ味を再現しようとした。やがて主原料がトマトになり、砂糖を加えた甘酸っぱい調味料になり、今では米国の料理では定番の調味料だ。レシピは大きく変わったものの、ケチャップという名前は残っている。 この場合、本当の起源はどこなのだろうか。どんな料理でもそうだが、果たして「これが起源だ」と間違いなく言えるのだろうか。
世界各地に似た菓子があるチェロス
食べ物はそもそも、時を経てそのままの姿を残すことができない。このため、歴史学者が起源を探るとき、文献を詳しく調べてレシピを比較することになる。チュロスといえばメキシコやスペインを思い浮かべがちな揚げ菓子だが、起源は古く、似たような食べ物はあちこちの文化で見られる。 例えば、チュロスは中国の「油条(ヨウティアオ)」が起源だとする説があるが、中国の歴史家であるミランダ・ブラウン氏はこの説を「ばかげている」と疑問視する。チュロスは生地を筒状の道具から絞り出して作るが、油条は卵生地を伸ばして広げ、円筒形に切り、たっぷりの油で揚げて作る。「油条は、スティック状の揚げパンのようなものです。おいしいけれど、チュロスとは無関係です」とブラウン氏は指摘する。 ブラウン氏によると、チュロスの起源は「ズラビヤ」と呼ばれるペルシャの菓子だといい、イラクのバグダッドで10世紀に書かれたレシピが、現在のチュロスとほぼ同じだと指摘する。この料理は形を変えながらさまざまな国に伝わり、やがてアルジェリアの「バナナ・ズラビア」になる。これも筒状の道具を使って絞り出して作る菓子だ。ペルシャのズラビヤは13世紀のスペインの料理本に掲載されているが、チュロスはどちらかというと北アフリカ版に近い形へ進化した。