すしやピザはどのようにして生まれたのか? 食べ物の意外な起源 チュロスやベーグルは?
トマトを語らずにピザは語れない
シンプルなレシピはいろんな文化の影響を受けやすい。「手順や材料の種類が多く、凝った料理になればなるほど、考案できる環境にある人の数、ましてや実際に考案できる人の数は減ります」と、食品人類学者のキャサリン・トウィス氏は語る。 例えばピザ。ピザのベースはシンプルで、平らなパン生地だ。「平らなパン生地は、どこでも誰でも作り出せます」とトウィス氏は言う。最古の記録は紀元前2200年頃のエジプトで、トッピングをのせて食べていた。この料理はその後、ギリシャ、イタリア、そして地中海全域に広まった。 これにチーズをのせ、トマトベースのマリナラソースをかけるようになって、今日のピザができあがった。と言いたいところだが、ピザに欠かせないトマトの発祥の地は、別の大陸だ。具体的には現在のメキシコとペルーだ。 「今日、トマトといえばイタリアです」と、米カリフォルニア大学バークレー校の人類学部長であるクリスティーン・ヘイストーフ氏は言う。「トマトソース、トマトピザ、イタリアン・ポモドーロといえば、まさにイタリアの食べ物だと人々は考えます。ところが、トマトが食べられることにヨーロッパの人が気づくまでに、数百年もかかっているのです」 食材の起源は料理の起源よりも特定しやすい。農作物の原産地については、食品考古学者が追跡できるためだ、トマトの旅は実に長い旅路だった。植民地開拓者がトマトをヨーロッパに持ち帰ったのは16世紀のことだ。当初はトマトに毒があると思われていたが、やがて定番の食材となった。現在、イタリアはヨーロッパ有数のトマトの産地だ。 「イタリアのトマト農家や缶詰工場で働く人に、『トマトは、本当はイタリアの作物じゃない』などとは言わないように」とヘイストーフ氏は話す。「それは彼らへの侮辱です。イタリア人はトマトをイタリアに根づかせ、イタリアのものにしてきたのですから」 19世紀にイタリア移民によって米国に持ち込まれたイタリアピザ。だからといって、長い歴史を持つトルコピザやギリシャピザ、さらには後に登場するニューヨークスタイルのピザの存在がかすんでしまうわけではない。