F1レッドブル・ホンダのモナコGP優勝の背景…なぜ29年ぶりVを果たせたのか
今年のモナコGPに臨むにあたって、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは次のように語っていた。 「ほかのサーキットにも低速コーナーはありますが、モナコはさらに(速度が)下がる。過去のデータを参考にしつつ、さらに低回転に落ちるということにもフォーカスしながら確認をしています。そのデータを見た上で、適切にチューニングしたものを準備して臨みたい」 その結果がフェルスタッペンの優勝であり、4位セルジオ・ペレス(31、レッドブル・ホンダ)、6位ピエール・ガスリー(25、アルファタウリ・ホンダ)と上位6台に3台のホンダ・ユーザーが入るという好成績につながった。 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はホンダの貢献をこう称えた。 「この結果は彼らのハードワークのおかげだと思っている。本当に素晴らしい仕事をしてくれたし、3台のホンダ・パワーユニットを搭載するマシンがトップ6に入ったことは見事な結果だ」 最後のポイントは、運だ。市街地コースのモナコでは波乱が起きやすい。セナとともにホンダが優勝した29年前のモナコでは、レース終盤にライバルがタイヤに異変を察知して、緊急ピットインしたことが勝利を呼ぶ引き金となった。 今回のレースでも、ポールポジションからスタートする予定だったシャルル・ルクレール(23、フェラーリ)が、前日の予選でクラッシュした際のマシンダメージによって、急きょ出走を断念するという事態に追い込まれ、予選2番手のフェルスタッペンが労せずして、トップグリッドからスタートすることができた。 またスタート直後から2番手でフェルスタッペンを追走していたバルテリ・ボッタス(31、メルセデス)がピット作業でホイールナットが外れなくなるという極めて珍しいトラブルによってリタイアしたこともレッドブル・ホンダ陣営にとっては、幸いとなった。 ただし、運だけでは勝てない。その運を手繰り寄せる実力がなければ、世界三大レースのモナコを制することはできない。優勝したフェルスタッペンはこう語る。 「すべてをコントロールできていたように見えるかもしれないけど、あれだけ長い間、集中力を切らさずにレースするのは簡単なことじゃない。特に今回のように大きくリードしているときこそミスを犯しやすい。目の前の状況にフォーカスし続けるよう、自分自身に言い聞かせながら、レースを戦っていた」 すべてが噛み合い、モナコで29年ぶり通算7回目の優勝を飾ったホンダ。この勝利は、ホンダF1にとって、うれしい通算80勝目でもあった。さらにモナコGPを終えて、ホンダはドライバーズ部門とコンストラクターズ(製造者)部門の2部門で、メルセデスを抜いた。ホンダが両部門でリーダーとなるのは、1991年以来、30年ぶり。 強いホンダが、帰ってきた。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)