通信制高校・大学が人気に!? 自分らしさを大切にする世代は、学び方も自分らしく
通信制課程大学でも多様な学び方を選択できる
通信制課程の大学は、単位を修得する条件などが通信制高等学校と類似しており、通信制高等学校の生徒にとっては慣れた環境で学習に取り組むことができます。一方で、日本大学のように通信教育部の独立キャンパスがあり、通学課程と同じ授業形態の「昼間スクーリング」を中心に学ぶことができ、通学制への転籍も可能な大学もあります。卒業論文が必須の大学もあれば、不要の大学もあります。 学費もさまざまで、4年間で460万円台の大学(早稲田大学人間科学部eスクール)もあれば、50万円台の大学(帝京平成大学通信教育課程)もあるのです。大学卒業資格を取りたい、自分の個性を生かした学びを続けたいという生徒にとって、通信制課程大学の増加は学び方の選択肢が広がることになります。
通信環境の変化と規制緩和が可能にした教育
通信制課程の大学が増えている理由のひとつに、通信環境の変化が挙げられます。以前の通信制教育では、紙の教科書を読み、レポートを手書きして郵送し、スクーリング会場に足を運び、学校で試験を受けなければなりませんでした。 それが今や、動画で講義を受けたり、チャットで質問をしたり、リアルタイムで学生同士や先生と議論したりするのはごく当たり前です。さらには、オンラインで試験を行うことが可能な大学もあります。これらを可能にしたのは、画像・音・動画を同時かつ双方向にやりとりができる情報通信技術の進歩です。 以前はスクーリングの参加は卒業に必須でしたが、大学設置基準の緩和により、卒業に必要な124単位すべてを「メディアを利用して行う授業」(インターネット等による授業)で修得できる通信制大学(学部)も出てきました。このように、通信環境の変化と規制緩和により、同じ「通信制」という名称がついていても、行っている授業や研究内容は従来のイメージとはまったく異なる場合があるのです。
通信制課程大学の今後は?
実は、大学の通信制課程は卒業するためのハードルが高いといわれています。最低学年数超過卒業者割合が58%※と、半数以上が4年で卒業できないことからもそれがわかります。 ※文部科学省「質保証システム見直しに係る基礎資料集4」 また、大学の通信制課程の場合、就職支援がどの程度あるのか、どのような業界や企業に就職実績があるのかといった情報公開が進んでいるとはいえません。卒業後の進路指導をしている高等学校のHPを見ると、通信制課程の大学を進学実績として掲げている高等学校は限られており、高等学校の先生方は、卒業者の進学先として積極的に公表しようというスタンスではないように思われます。このようなことから、通信制課程の大学には「特殊な大学」という印象を持つ方が多いと考えられます。 しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、通学制の大学でも、オンライン授業などの遠隔授業の活用が進みました。文部科学省の調査によると、多様なメディアを利用した遠隔授業を実施する大学が2021年度は70%以上にのぼっています。デジタル技術の発達とコロナ禍を契機に、通学制と通信制の学び方が一部重なりつつあるのも事実です。 そんな中で、通学部と通信部の両方を持つ京都芸術大学の1年次入学者は、近年で逆転しました。これまで実技を伴う制作系の授業は対面で受講する必要がありましたが、オンラインで受講できるようにする※など、時間や場所を選ばずに学べる環境を整えたことが、逆転の大きな要因と思われます。 その結果、さまざまな年代・立場・居住地の人たちが学べるようになりました。実際、在学生の在住エリアを見ると、地元の近畿地区は24%に過ぎず、関東地区が44%と最大です。 ※一部のコースはオンラインで入学から卒業まで可能