通信制高校・大学が人気に!? 自分らしさを大切にする世代は、学び方も自分らしく
2025年4月に通信教育課程大学が3校開設予定
次に、大学について見ていきましょう。文部科学省は2023年11月、2025年新設に向けて認可申請のあった大学名を公表しました。申請した4校のうち3校が通信制課程の大学でした。2023年現在、通信制課程の大学は放送大学を含めて44大学しかないことを考えると、1年で3大学の開校は通信制課程大学の大幅な増加といえます。 2025年開設予定の大学のひとつであるZEN大学は、N高等学校・S高等学校を創設・運営している株式会社ドワンゴが公益財団法人日本財団と提携したオンライン大学です。新入学生の募集定員が5,000人と、かなりの大型開校だといえます。
通信制課程大学が現役高校生の進学先として選ばれている
日本における通信制大学に対するイメージは、「就業しながら学べる」「さまざまな経験を経た大人が学び直しをする」といったものが一般的ではないでしょうか。人生100年時代が現実のものとなりつつありますから、20歳前後で学びを終えてしまった知識やスキルだけでは、世の中の動きに対応できません。このため「生涯学習」*¹「リカレント教育」*²「リスキリング」*³の必要性がこれまでも叫ばれており、通信制課程はこれらのニーズに応える役割を果たしてきました。 しかし近年では、18~22歳の年齢でも通信制課程大学で学ぶ方が増えており、現役高校生に選ばれる大学へと変化してきています。2023年の学校基本調査では、18~22歳の通信制課程在籍生の割合が最多となりました。 *¹ 職業的なスキルの習得にとどまらず、充実した人生を送るためにさまざまな分野の知識を学んだりチャレンジしたりすること *² 学校教育を終えた社会人が、その後も生涯にわたって学び続け、就労と学習のサイクルを繰り返していくこと *³ 新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
新たな大学進学ニーズの掘り起こし
私立通信制高等学校で最大規模のN高等学校とS高等学校でも大学等進学率は33.24%(2022年度)※にとどまり、卒業者の半数以上が大学等に進学しているわけではありません。2022年3月の通信制高校卒業者は7万993人で、うち大学進学者は1万2,722人でした。大学進学率は17.9%です。私立通信制高等学校でも25%程度にとどまっています。全体の大学進学率は56.6%なので、大きな差があります。 ※N高等学校・S高等学校HP「2022年度 進学・合格実績」 ZEN大学の大規模な学生募集は、N高等学校・S高等学校の卒業生の中で、従来は大学進学を考えてこなかった生徒の進学先としての需要を見越してのものと思われます。通信制の教育に慣れている生徒の一部が、大学についても通信制課程を選択する可能性もあります。加えて、コロナ禍を経てオンライン授業に慣れた全日制高等学校等からも、通信制課程の大学を選択することも十分に考えられます。 このように、通信制課程大学の新設は、新しい進路のニーズとして学生募集の「伸びしろ」があると創設予定者が見ているからではないでしょうか。