「他とは違う恐さがあった」“クイズの帝王”伊沢拓司が高校時代に最も恐れた相手は…?「全国模試No.1」北海道の公立校にいた“旭川の神童”の正体
会心の単独正解…「大会の主役」の一翼へ
そして、旭川東にとって目に見えて流れが変わったのは、10問目のことだった。 「タイタニック号を助けに来た船の名前は?」 答えは「カルパチア号」。他チームは皆、ペンを動かすことすらできない。それを単独で正解したのが塩越だった。 「え、なんでそんなん知ってるの?」 思わずチームメイトの重綱がそう尋ねるほどの、超難問だった。そして、その単独正解があってから、テレビカメラは旭川東の動きをマークするようになる。重綱は空気感が変わるのを感じたという。 「この辺りからは僕はほとんど問題に答えていないと思います。まずはここを抜けないと話にならないので、落ち着くために各チームの正解数を数えていました。塩越のおかげもあって、中盤以降は『まぁこれで落ちることはなさそうだな』という感じにはなっていました」 そして、結果発表。スタジオに用意された大型スクリーンに、最初に映ったのは旭川東の3人だった。それはつまり、望外の1位通過を意味していた。 塩越が振り返る。 「そこで『これ、いけるかもしれないぞ』と。そこまでは僕らってテレビ的には“ナゾの公立校”の扱いだったんです。それで最下位通過とかじゃ、やっぱり注目されない」 だが、トップ通過となればテレビ側も当然、塩越たちにコメントを求める。超難問の単独正解という強烈なインパクトも効いた。1回戦で爪痕を残したことで、旭川東はそれまでの“その他大勢”から、その年の番組の主役のひとつになることができた。 「田舎の公立校が、都会の超進学校を倒す――。視聴者が好きな、そんなストーリーの俎上に乗ることができた気がしたんです」(重綱) 驚いたのは、優勝候補の筆頭で伊沢拓司や田村を擁する開成だった。当然、この1回戦でもトップ通過を狙っていたからだ。 前編で触れたエコノミクス甲子園以降の交流もあり、もちろん開成のメンバーは旭川東の存在自体は知っていた。実力があることも分かっていた。 「でも、ここで1位を取るほどなのかと。特に他のクイズ強豪校とは違う『分からない』怖さがありました。1000問やれば間違いなくウチが勝つ。でも最初の10問なら――こちらが知らない知識を持っている可能性があった」(伊沢) 2位通過はその開成。そのほかの6校は、県立浦和(埼玉)、県立船橋(千葉)、慶應(神奈川)、水戸第一(茨城)、洛南(京都)、久留米大附設(福岡)だった。
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