「他とは違う恐さがあった」“クイズの帝王”伊沢拓司が高校時代に最も恐れた相手は…?「全国模試No.1」北海道の公立校にいた“旭川の神童”の正体
全国制覇の要となる“旭川の神童”の存在
大手予備校の模試で「偏差値全国1位」を獲得した“神童”がクイ研で、重綱の同級生に在籍していた。この年は重綱とは別チームで大会に出場していたのだが、このチャンスを逃す手はない。 年が明けた頃、3年目の高校生クイズを目指すため、重綱はすぐに塩越に頭を下げた。 「今年の高校生クイズ、一緒に出よう。塩越がいれば日本一だってなれるかもしれない」 きっとテレビは、肩書きとして塩越の“全国模試1位”を前面に出してくれるはずだ。そうすれば、きっと自分たちに風を吹かせてくれる。“神童が率いる地方公立の星”が紡ぐ物語――それは、間違いなく舞台に残す価値があるはずだ。 もちろん当時、クイ研のエースでもあった塩越と一緒に大会に出たい部員も多くいた。当然、エースと一緒に出られれば勝率はあがるからだ。だが、塩越もこの重綱の説得には心を動かされたという。 「そうやって『テレビに出た時にどう映るか』とかを考えているのが、シンプルに興味深いなと。たしかにそういわれれば納得できる理由でもありました」 そうして文系だった2人の苦手分野を補う形で、2年生の理系部員を加えた3人で、高校生活最後の大舞台へ挑むことになった。 2010年8月。無事に2年連続となる全国行の切符を手にした旭川東の3人は、再び麹町の日テレスタジオにやって来ていた。昨年までと違ったのは、この年は明確に「日本一」を意識していたことだ。 中でもライバルと目していたのは、東京代表の開成と埼玉代表の県立浦和だった。塩越が振り返る。 「競技クイズの基本でもある早押しに関しては、どうしても経験がものをいう部分が大きい。その意味で関東の強豪でキャリアもあるその2校は頭ひとつ抜けている印象でした。逆にウチは、どうしても試合経験の数では劣る。試行錯誤で早押しのトレーニングもしてきましたけど、正直、最後まで自信を持つことはできませんでした」 最後は実際に戦ってみなければ分からない。そんな期待と不安を胸に、旭川東の戦いは幕を開けた。 1回戦は前年同様、30問のボードクイズだった。 早押しではなく基本的に「知っているかどうか」の勝負だ。塩越という大エースを擁しているとはいえ、いわゆる関東・関西の中高一貫校と比べれば授業の進度も遅い地方公立校のチームとしては、知識の幅も未知数なところはあった。ただそれは裏を返せば、そういった強豪校が「大会で頻出でないから」と切り捨てた知識を抱えている可能性もあった。
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