「他とは違う恐さがあった」“クイズの帝王”伊沢拓司が高校時代に最も恐れた相手は…?「全国模試No.1」北海道の公立校にいた“旭川の神童”の正体
重綱の記憶に残った「高校生クイズ」の特徴
ただ、この年重綱の記憶に強く残ったのは、クイズそのものの記憶ではない。 続く準々決勝で感じた、ある「違和感」だった。 「ベスト8でウチは奈良の東大寺学園と当たったんです。そこでなんというか……すごい“噛ませ犬”感を覚えたんです」 当時の東大寺学園には「京大合格者No.1」というキャッチフレーズがつけられていた。 奈良の名門私立の中高一貫校で、進学実績を見ても超進学校らしいインパクトがある。すると、現場で流れる実況やスタジオゲストのコメントを聞いていても、明らかに「東大寺寄り」であるように感じたのだ。 結果的に重綱たちはベスト8で完敗。東大寺学園はこの年、一気に優勝まで駆け上がった。 自分たちだけではない。ほかの対戦カードを見ていても、東京代表の開成高校は「東大合格者No.1」はもちろんのこと、田村正資というアイコンも擁していた。 重綱の目には、そういったチームには、背中を押す「見えない風」が吹いているように見えたのだ。 一方で、重綱はそれをネガティブには受け取らなかった。 出題の運もあったとはいえ、クイズの実力も全国ベスト8に進出する程度には鍛えられていることが分かった。あと1年あれば、もっと伸ばすこともできるだろう。そしてなにより、「高校生クイズ」の舞台には“風”があることも体験できた。その“風”を味方にできれば頂点だって見えてくるのでは――? そんな野望を持ったという。 「“知の甲子園”と言っても、基本はテレビのエンタメですから。何か推すポイントがあった方が残しやすいに決まっている。クイズの実力はもちろん大前提だけど、場を味方につけられればもっと勝てる可能性は上がる。“北の雑草魂”がキャッチフレーズじゃ、なかなか勝てないですよ(笑)」 しかも、である。 幸か不幸か、ちょうどこの時の旭川東にはそんな重綱の狙いを満たす男がいたのである。それが塩越希だった。
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