不登校の息子に「やったらあかんことをやってしまった」ワンオペ母の目が覚めた ”厳しい言葉”
ミノリさんを救った担任の先生
夫の態度に打ちひしがれたミノリさんを救ったのは、小学校の先生たちだった。まったく学校に行けなくなった4年生の担任は週に一度、学校帰りに必ず様子を見に来た。ナオキくんはまだ会えない状態だったため話が聞こえないよう、玄関前で母の気持ちをじっくり聞いてくれた。毎回1時間から2時間。雨の日は短く終わったけれど、寒い冬も二人で白い息を吐きながら話し込んだ。 5、6年の担任もよく話を聞いてくれた。そのころ訪れた担任と会えるようになっていた息子に「交換日記しよう」と働きかけてくれた。ナオキくんはたわいない自分の日常を、ゲームをした、お母さんと買い物に行ったなどと箇条書きした。それが2年続いた。 母子と伴走してくれた担任はどちらも30代。4年の担任は小さい子どもを育てていたため、まるでママ友のように話せた。5、6年の担任は「うちの弟も学校に行きづらいときがあったんです。だから気持ちがよくわかるんです」とナオキくんの気持ちに寄り添ってくれた。共感や感情の共有をする時間が、母と子を丸ごと温めてくれた。 一方で、中学選びを迷ってもいた。不登校を経験した子どもたちが学ぶフリースクールのような私立中学校があり、学区外ではあるがそちらのほうがいいのではと考えた。そこで池添さんに相談したらこう諭された。 ――お母さん、子どもが選ぶことをやろう。親のあんたが選んだらあかん―― 「どうしても子どもには幸せになってほしいという気持ちからでした。そのためには道筋を私が作ってしまったほうがいいかもと思ったんです」(ミノリさん)。言い訳めいたことを言おうとしたら、ぴしゃりと言われた。 ――お母さん、同じ失敗してないか?(子どもに)いいことしてないよ―― 厳しい言葉だったが、ミノリさんは「おかげで目が覚めました」と感謝する。 「なんかね、良かれと思って道筋をつけようとしたことが、先生がおっしゃったように全て裏目に出ちゃってました。漢字ドリルにしても、子どものためを思って私は頑張ってやったけれど、それは子どもにとったら苦痛でしかない。余計なことをしてしまって、結局は子どもの回復を長引かせてしまった」