アニメ監督・鴫野彰さん逝去 死因の「胆管がん」の原因・発症しやすい人の特徴を医師が解説
胆管がんの治療方法と手術
編集部:胆管がんを疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか? 甲斐沼先生:胆管がんを疑う場合、消化器科(内科・外科)を受診しましょう。特に、肝臓・胆のうなど消化器疾患の検査・治療を行っている専門医への受診がおすすめです。肝胆膵内科・肝胆膵外科など専門科のある病院もあります。 ご自身で専門医を調べることが困難な場合は、まず、かかりつけ医に相談して専門医を紹介してもらう方法もあります。胆管がんは、早期発見・早期治療が重要なので、気になる症状がある場合にはすぐに専門医を受診しましょう。 編集部:どのような検査で診断されますか? 甲斐沼先生:胆管がんの診断でまず行う検査は、血液検査・腹部超音波検査です。 血液検査では、腫瘍マーカー・肝胆道系酵素などを調べて検査を行い、異常を確認します。腹部超音波検査は、胆管がんを疑った 場合に最初に行う画像検査です。胆管がんの中でも、特に肝外胆管がんの診断では、80~90%の確率で診断がつくとされています。 次に行われるのは、CT検査・MRI検査・PET検査です。これらの検査では、がんの有無・広がり・リンパ節転移・他臓器転移などがわかります。MRIの技術を使う核磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)も、より詳しい診断に有効であると報告されています。 また、内視鏡検査として行われるのは、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)・超音波内視鏡検査(EUS)・胆道鏡(POCS)・内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)です。いずれも、がんの深さ・広がりをより詳しく調べることが可能です。 また、内視鏡を使って組織を採取する生検を行い、病理検査に活用します。専門医の判断で、これらの検査を組み合わせて、胆管がんを診断します。 編集部:治療方法を教えてください。 甲斐沼先生:胆管がんの治療方法は、がんのステージ・年齢・既往・健康状態などを考慮した上で決まります。一般的な治療方法は、手術・化学療法・放射線療法・胆道ドレナージです。 手術は、胆管がんの根治を目的としており、特に早期治療では、手術が第一選択です。手術は胆管の一部または全体を切除するほか、がんの位置によっては肝臓・膵臓・リンパ節を含めた広範囲な切除が必要な場合もあります。 化学療法は、手術前のがん縮小目的・がんの切除が不可能な場合に行われます。また、がんの進行抑制・症状の緩和を目的として行われる場合が多いです。しかし、術後の補助療法としての化学療法は、その効果が十分に証明されていません。 放射線療法は、手術でがんが取り切れなかったり、リンパ節への転移があったりした場合に行われます。しかし、その効果は化学療法同様、十分に証明されていません。 また、がんの直接的な治療ではありませんが、黄疸など症状緩和の治療方法として胆道ドレナージがあります。 胆道ドレナージとは、胆道にがんができて胆汁の流れが悪くなった場合に、管などを使って排液させる処置です。この方法は、管を体外に出す外ろうと、ステントを使う内ろうとがあります。 このように、胆管がんにはさまざまな治療方法がありますが、専門医の診断・判断によって組みあわせて行われる場合が多いです。 編集部:胆管がんのステント留置とはどのような手術でしょうか? 甲斐沼先生:胆管がんの治療方法であるステント留置は胆道ドレナージの1つで、内ろうともいいます。胆管のがんが原因で胆汁の流れが妨げられると、黄疸などの症状が出て、スムーズに治療を進めることができません。 ステント留置は、ステントという網目状の金属製または樹脂製の管を胆管の中に留置して詰まりを取り、胆汁の流れを正常にする方法です。 ステント留置の手術には、腹部の表面から留置する経皮的な方法と、内視鏡を使ってステントを挿入する方法があります。経皮的・内視鏡的のどちらを選ぶかは、黄疸の状態・全身状態を踏まえて専門医が決めます。 ステント留置後は日常生活を送ることが可能です。しかしステントは、がんの増大による詰まり・定期的な詰まり・抜け落ち・感染などが起こる場合があります。ステントは体内にあり、これらのトラブルに気づきにくいので注意が必要です。 腹痛・黄疸・発熱などの症状がみられた場合は、すぐに受診しましょう。また、ステントの状態を確認するための定期的な受診も大切です。