南海トラフなどの巨大地震に備える契機に 震源域の豊後水道で震度6弱など強い揺れ頻発
この被害想定見直しの最新報告を受け、当初は今春にも防災基本計画も見直される予定だった。しかし、内閣府関係者によると、1月に能登半島地震が発生したことから作業部会内部に「能登半島地震の教訓を南海トラフ巨大地震の被害想定や防災対策に反映させるべき」「想定死者に災害関連死も考えるべき」などとの意見が出された。このため被害想定の見直しや基本計画改定の作業は予定より遅れているという。
2016年に起きた熊本地震では災害関連死が直接死の約4倍に上ったことが大きな問題になった。能登半島地震での関連死は石川県によると4月23日時点では15人で、熊本地震より大幅に減るとみられている。しかし南海トラフ巨大地震はその規模の大きさから関連死も大幅に増えるとの見方もある。
地震頻発で「備え」強化を
1月1日の能登半島地震以降、日本列島では震度5弱以上の地震が頻発している。同月6日と9日には能登半島や佐渡島付近でそれぞれ震度6弱と5弱の地震が発生。3月にも15日に福島県沖を、21日に茨城県南部をそれぞれ震源とする震度5弱の地震が発生した。
4月に入ると豊後水道を震源とする地震に先立つ8日には九州の大隅半島東方沖を、2日には岩手県沿岸北部をそれぞれ震源とする震度5弱の地震が発生した。 3日には南海トラフの延長線上にある与那国島に近い台湾でM7級、最大震度6強の地震もあった。
震度5弱以上の地震は4月25日時点で20回を超えている。気象庁の統計では、2020年は7回、21年は10回、22年は15回、23年は8回だ。近年だけ見ると今年は4月までにいかに地震が頻発しているかが分かるが、多くの地震の専門家は、特段異常な現象ではなく、阪神淡路大震災を起こした1995年の兵庫県南部地震以降、日本列島は地震の「活動期」に入っていると指摘している。
国の防災・減災に責任を持つ政府や自治体のほか、「共助」を担う地域社会から個人に至るまで、「大地震はいつ起きてもおかしくない」との前提でさまざまな角度から「備え」を点検し、強化したい。 (内城喜貴/科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員)