南海トラフなどの巨大地震に備える契機に 震源域の豊後水道で震度6弱など強い揺れ頻発
同時に気象庁は有識者による「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を臨時開催し、巨大地震との関連を調査、検討し、危険性を判断する。その結果、M8以上の大地震が起き、後発地震の可能性が高まったと判断された場合は危険度がかなり高い「巨大地震警戒」が、またM7以上の地震が起きるなど危険度が一定程度想定されると「巨大地震注意」が出される。
巨大地震警戒は発生後の避難では間に合わない恐れがある住民を対象に1週間程度の「事前避難」を求める。これまで実際に臨時情報が出た例はない。 4月17日に起きた豊後水道を震源とする地震のMは6.6で、地震臨時情報発令の条件の一つの「M6.8以上」の基準より0.2少なく、同情報は出されなかった。もし今回震源がもう少し浅くMが6.8に達していたら、初の発令になっただけに自治体や住民らにかなりの混乱が生じた可能性もある。
被害想定と計画改定を延期
内閣府は東日本大震災の翌年の2012年に南海トラフ巨大地震の想定震源域の場所や津波が集中するとみられる地域や、季節、時間帯などを組み合わせた複数パターンの被害想定をし、死者は最大32万3000人と発表した。
このほか、内閣府の公表データから想定される最悪の数字だけを拾うと、全壊、焼失家屋は最大238万6000棟、経済的被害は215兆円近くに及ぶ。社会に大混乱を及ぼし、上水道は最大3440万人が、下水道は3210万人が使用不可能になり、最大2710万世帯が停電し、大部分の携帯電話は使用不能になる。帰宅困難者は京阪都市圏約660万人、中京都市圏約400万人を数える。
こうした国の根幹を揺るがす甚大な被害想定を受け、政府は2014年に「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を策定。23年度末までに想定死者数を8割減らす目標を掲げた。そして自治体などと連携しながら「事前防災」政策を強化してきた。
その成果が一定程度出ていることを前提に内閣府の作業部会は、建物の耐震化や避難手段の確保など約10年の対策の進ちょくを反映させた被害想定の見直しを昨年2月から進めてきた。