【おやじのおやつ】日本男子バレーを牽引する、山村宏太さんの愛するスイーツ2選
さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。今回は「サントリーサンバーズ大阪」のスペシャリスト山村宏太さんが登場 【画像】おやじのおやつ
映画化されたマンガ『ハイキュー!!』の大ヒット、パリオリンピックでの熱戦が後押しになり、今、日本男子バレーがとてもアツい。世界に引けを取らないレベル、さらに選手たちが活き活きかつ伸び伸びとプレーする姿に驚いた人も多いはずだ。さて、今回紹介するのは、名選手を育てる“縁の下の力持ち”である山村宏太さんについて。現役時代は“ヤマコフ”の愛称で親しまれていた人物だ。 日本人では珍しい身長2メートル超えゆえ、佇まいは大迫力。しかし、かつて全日本男子バレーの主将を務め、日本のトップチームが競い合うVリーグ(現在はSVリーグ)『サントリーサンバーズ大阪』では桁違いの勝率を上げた指導者とは思えないほど、口調も笑顔もハートも、とっても優しい。ルーツや秘密を探っていこう。 「小さい頃は、内向的でおとなしい少年でしたね。小学3年生でバレーボールと出会い、中学と高校もバレー部でしたが、続けられた理由のひとつが、ネットを挟んでプレーするため、相手チームと激しい接触や乱闘のようなものがないから(笑)。厳しく鍛え抜かれたわけでもなければ、全国大会に出場したこともありませんでした」。しかし、高校2年で2メートル近くに成長した原石を、世間が放っておくはずがない。 「顧問の先生の計らいで高校選抜の合宿に参加、大学に進学することになりました。ただ、いきなり体育会系の世界に放り込まれたせいか、心と体がついていかず、練習に参加できない状態が続いたことも。そんな弱い僕でも、バレーボールという競技を辞めたいと思わなかったのと、先生たちが経験を積ませる意味でコートに送り出してくれたおかげで、4年生の頃には全日本選抜に呼ばれるようになりました。才能はなかったけれど、人との出会いや、各ポジションの特性を活かせるラリーポイント制へのルール改定など、運には恵まれていたんです」 社会人になり、『サントリー』に入社。『サントリーサンバーズ大阪』では現役選手でありながら、指導者になるための学びも並行。「20代半ばから、セカンドキャリアを考えていましたね。『バレーボールを伝えたい』思いが強く、スポーツ指導者の“上級コーチ”(現在の名称は“コーチ4”)の資格取得をきっかけに、『もっと高いレベルで選手をサポートしたい』気持ちが高まり、37歳で現役を引退しました」 コーチを経て、監督に就いてからは、毎年Vリーグへの決勝進出を果たし、そのうちの75%は優勝。2023年12月の世界クラブ選手権ではアジア王者として、日本で初めて銅メダルを獲得など、優秀な成績を残した。 「在任中は、どうやったら選手ひとりひとりが活躍できるかを一緒に考えるコーチングのスタイルでした。選手それぞれの最大を引き出し弱点をフォローしつつ、組み合わせや化学反応によってチーム力を上げていくというか」。かつてのトップダウン式の指導法とは真逆の理由を聞くと、「強制しても気持ちは乗らない、集中力も続かない。自分がこんなプレーをしたい、選手になりたいと思って練習したほうが、成長率は格段に高いので。その一方で、今の10代・20代は、すばらしい才能や面白い考えを持っているのに、なかなか口に出したり、言語化できない子も。そういう時は、根気強く丁寧に掘り下げながら、可能性を探り続けますね。チームのルールの大切さを共有しつつ、一瞬の判断やひらめきを考えたり行動に移せるような個人の力も発揮させつつ……。おかげさまで、すばらしい選手へと成長してくれたと思います」。一般社会でも通用するような、納得の指導術。「いいことばかり話してますが、僕が選手時代に受けてきた指導とはまるで別モノだから、たくさん失敗もしましたよ(苦笑)」 苦労を経てわかったことのひとつが、「すべてに介入しないこと。関わる人数が多いゆえに全員と均等に関わることも、全員の気持ちを僕に向けることも不可能。選手、そしてスタッフ内で何人かキーマンを決めておき、それぞれで密にコミュニケーションをとってもらう。任せるところは任せて、本当に必要な時だけ、伝えるようにしましたね。僕の顔色を伺わない、僕がいなくても成立するチームになって欲しかったので」 試合を観戦していると、かつてトップアスリートであったにも関わらず、二歩も三歩も下がって周りの選手やスタッフを引き立て、誰も置いていかない心配りをしている。 「(自分よりも他人の)成長を目の当たりにしたり、それに携われることに喜びを感じるタイプなんですよね」と言いつつ、そこまで一生懸命になれるのは、「選手生命は青天井ではないことがわかっているから。10年続けられたら幸せなほうで、40歳をすぎて現役の選手はたった1~2%、20代前半で肩を叩かれる選手も少なくないんです。引退する時に、アスリートとしてやり切ったと思って欲しいから、できるだけ自分の天井に到達できるようなサポートをしたいんです」