起これば激甚被害、しかも予測不可能な「火砕流」…実は「世界のあちこち」で日常茶飯事に起きていた!
もし、いま富士山が噴火したら、なにが起こるのか、あなたはご存知ですか?―― 2011年3月に起こった東日本大震災は、富士山を「噴火するかもしれない山」から「100パーセント噴火する山」に変容してしまいました。 【前編画像】火砕流の威力…迫り来る「雲仙の火砕流」「街一つが丸ごと消えた」例も! 富士山が噴火したとき、何が起こるのか? 火山の第一人者で、ニュース解説などでもお馴染みの地球科学者・鎌田 浩毅さんが、前回からご紹介している「火砕流」について解説します。 *本記事は、『富士山噴火と南海トラフ』から、内容を再構成してお届けします。
火砕流のタイプとその起源
考えられる火砕流のタイプは、大きく3つに分けられる。 (A)溶岩ドームが崩れて発生するタイプ (A)のタイプは、溶岩ドームの大きなブロックが砕けながら、急勾配の斜面を転げ落ちることによって発生する火砕流である。インドネシアのメラピ火山が、成長中の溶岩ドームからよくこのタイプの火砕流を起こすことから、火山学では「メラピ型火砕流」と呼ばれている。1991~1995年に雲仙普賢岳で発生したものもこれに属する。 溶岩ドームとは、比較的粘り気の強いマグマが地表に噴出したときにできるドーム状の高まりである。その下からマグマがせり出してくると、溶岩ドームは次第に大きく成長するのだが、大きくなりすぎると、まだ熱い溶岩の塊が端から崩れ落ちることがある。 この塊がバラバラにはじけることにより、細かくて熱い火山灰が大量に生まれ、小規模の火砕流が発生する。このとき、火砕流の中に含まれる高温の岩片が、夜間に赤く光って見える。
さらに、こんなタイプも……!
(B)高く上昇した噴煙柱が崩壊して発生するタイプ (B)のタイプの火砕流は、開いた火口から火砕流が一気に流れ出るもので、「スフリエール型火砕流」と呼ばれている。ときには火口からいったん上空に噴煙柱が立ち昇ってから、崩落して火砕流となることもある。 たとえば、大型のビルが解体される現場で、ビルが爆破された直後に瓦礫の細かいかけらが崩れ落ち、砂煙が水平方向に広がる様子と似ている。 スフリエール型の火砕流は、メラピ型と比べると、より広範囲にわたって流れ下る点が特徴的である。 (C)マグマが急斜面に落下した直後に走り出すタイプ (C)のタイプは、山頂から噴き出した高温のマグマが、傾斜角30度を超すような斜面に落下したときに発生する。マグマは斜面にへばりつくことができずに、下へと転がりだす。ここで破砕が急速に進んで、粉体流が発生する。その結果、高温の火砕流となり、一気に流れ下るのである。 これら3つのタイプの火砕流は、いずれも大変に危険であり、いつ発生するかはほとんど予測不可能である。