東京ヴェルディが故・藤川孝幸氏の思いと共にJ1参入PO1回戦突破!
敵地NACK5スタジアム大宮に、突如として「フジカワ」コールが鳴り響く。勝利の余韻が色濃く残るゴール裏のスタンド前へ、挨拶を終えた東京ヴェルディの選手たちのなかからDF田村直也が再び歩み寄り、両手に握った2つのユニフォームを誇らしげに掲げた直後だった。 緑色に染まったスタンドを駆り立てたのは、いずれもゴールキーパーのユニフォームだった。ひとつはヴェルディ川崎時代のカラフルなもので、もうひとつは今シーズンのそれの背中に「FUJIKAWA」と記した特製のもの。天国へ旅立ったばかりの、クラブ黎明期のレジェンドと喜びを分かち合った瞬間だった。 25日に幕を開けたJ1参入プレーオフ。8日前に閉幕したJ2で6位に滑り込んだヴェルディは、左腕に黒い喪章を巻いて5位の大宮アルディージャとの1回戦に臨んだ。末期の胃がんと闘病しながらも力尽き、今月15日に56歳の若さで他界したOB、藤川孝幸さんを偲んだものだった。 藤川さんが常務取締役を務める、総合スポーツサービスのリーフラス株式会社の公式サイトなどで死去が発表されたのは20日。しかし、田村はFC町田ゼルビアとのJ2最終節前に悲報を知らされていた。 「(藤川さんと)つながりのある方から聞いて、僕は個人的に知っていました。町田戦のときも思いはありましたけど、今日は発表されてから初めての試合だったので、藤川さんと一緒に戦いました」 アルディージャ戦の先発メンバーでは最年長となる34歳の田村は、ヴェルディの下部組織の出身。ジュニアユース、そしてユースで心技体を磨き、中央大学をへて2007シーズンにベガルタへ加入。そこで偶然にも藤川さんと出会い、親交を深めてきた。 藤川さんは2005シーズンにベガルタのGKコーチを務めるも、1年限りで退団していた。ただ、当意即妙でユーモアに富んだトークが人気を呼び、仙台放送で毎週土曜日の夕方に生放送されているスポーツ情報番組『スポルたん!LIVE』のゲストを数十回も務めてきた。 「僕のことをすごく気に入ってくれて、その番組によく呼んでもらったんです」