東京ヴェルディが故・藤川孝幸氏の思いと共にJ1参入PO1回戦突破!
藤川さんは1980年にヴェルディの前身、読売クラブに入団。下部組織の出身だったこともあり、田村を気にかけたのかもしれない。そして、田村自身も2014シーズンにヴェルディへ移籍。名実ともに後輩となってからは、古巣へ深い愛情を注ぎ続ける藤川さんの存在をより身近に感じるようになった。 たとえばリーフラスはコーポレートパートナーとして、ビジネス面でヴェルディをサポートしてきた。藤川さんに末期の胃がんが見つかり、余命3ヵ月と宣告されたのは昨年末。病名を公表し、逃げずに立ち向かう藤川さんの力になりたいと、5月26日の愛媛FC戦前には激励マッチが開催されている。 ホームの味の素スタジアムに駆けつけたラモス瑠偉や都並敏史、武田修宏ら約40人ものOBを前に、藤川さんは「ヴェルディは自分の命でありすべて。何とか奇跡を起こして恩返ししたい」と誓った。そして、田村をはじめとする現役選手たちにはヴェルディの未来を託している。 「大丈夫ですかと聞いたら、こちらが逆に励まされるような言葉をいただいて。しっかり自分を保たれて、辛い顔ひとつ見せない『男・藤川』を見せてくれました。ヴェルディに対する思いをずっと感じていましたし、しっかりと引き継いでいかなければいけない。僕たちにできることと言えば、藤川さんの思いを汲みながら精いっぱい戦って、J1に昇格することなので」 アルディージャ戦は心の強さが問われる展開となった。プレーオフの規定により、6位のヴェルディは90分間を引き分けで終えた時点で敗退が決まる。前半をともに無得点で折り返し、迎えた後半14分にはボランチの内田達也が2枚目のイエローカードをもらって退場になってしまう。 ヴェルディのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督がまさに内田に代えて、FWレアンドロを投入して攻勢を強めようとしていたタイミング。急きょプランを修正し、攻撃陣を一枚削って守備を安定させ、カウンターと武器でもあるセットプレーにかけた。 果たして、均衡を破る待望の一発はセットプレーから生まれる。後半26分。MF佐藤優平が左サイドから放った絶妙の直接フリーキックを、飛び込んできたDF平智広がピンポイントで合わせた。6分を数えたアディショナルタイムを含めて、その後のアルディージャの猛攻を防ぎ切った。 ボランチでフル出場し、パスを供給するだけでなく体を張った守備でも奮闘したヴェルディユース出身の21歳、東京五輪世代の井上潮音は藤川さんを直接知らない。ただ、黄金期にスーパーサブで活躍し、ユース監督をへて昨シーズンからトップチームのコーチを務める藤吉信次氏から当時の様子を聞いている。