自民党総裁選 所見演説会(全文3完)岸田氏「1人1人を輝かせるリーダーに」
時代を大きく転換させた7年8カ月
そして安倍総理が先日、退陣を表明されました。安倍総理の7年8カ月の政権、この7年8カ月は日本の歴史にとっても特筆すべき時代であると思います。かつて日本の経済、6重苦といわれた、あるいは外交崩壊とまでいわれた日本のありようが、この7年8カ月、経済においても外交においても、これは大変大きな成果を挙げることができた。時代を大きく転換させた7年8カ月であったと思います。 安倍総理は数々の輝かしいレガシーを残された。この評価は、平素であるならば政治家に対して皮肉っぽく、そして批判の言葉を繰り返すイギリスの経済紙『エコノミスト』の安倍総理に対する評価であります。かつて日本の総理でここまで海外から評価された総理があったでありましょうか。安倍総理が退陣を表明された今、あらためて安倍総理が7年8カ月にわたって国家、国民のため孤独に耐え、プレッシャーに耐えながら身を粉にしながら努力をされてこられた。このことにあらためて敬意を表し申し上げたいと思います。 私も政調会長として、また外務大臣として、チーム安倍の一員として仕事をすることができたことを誇りに思っています。そして今、私たちはこの安倍総理の残された成果、この輝かしい成果を土台として、次の時代を考えていかなければいけない。こういった立場にあります。
事態の変化に機動的に対応すべき
こうした私たちに今、襲い掛かっているのが新型コロナウイルスの猛威であります。医療崩壊を防ぎ、国民の命を守る、そして国民の生活、事業、そして雇用を守る。感染症対策と経済対策、これを車の両輪としてしっかり進めていく。そしてそれを実現するためには医療におけるPCRと同時に、経済、社会を回すPCRをしっかり充実させなければならない。また秋冬のインフルエンザ感染蔓延を前にして、医療機関の経営をしっかり安定させなければならない。ワクチン、治療薬、一刻も早い開発につなげなければならない。さらにわが国は事業規模230兆という世界最大規模の経済対策、用意したわけでありますが、これをしっかりと実施することと併せて、事態の変化に機動的に対応していかなければならない。 今、コロナとの戦いは日本だけではなくして、世界が取り組んでいます。日本だけではなくして、アメリカをはじめ、世界が大型の財政出動を行っています。なおかつ経済の厳しい状況を考えると、金利はなかなか上げることができない。こういった状況の中にあっては、このタイミングにおいては、われわれは必要であるならば思い切った財政措置、これも引き続き考えていかなければいけない。こういった立場にあるんだということも感じます。 ぜひ、こうした新型コロナウイルスとの戦い、まずは政治の大きな責任としてしっかり続けていかなければなりません。しかしながらこの新型コロナウイルスとの戦いの中で、わが国の持つさまざまな課題、こういったものも浮かび上がってきました。例えば経済。アベノミクスによって間違いなく大きな経済の成果が得られました。GDP、企業収益、雇用、どれを取っても大きな成果が確認をされました。これは素晴らしいことです。 ただこの成長の果実、いつか所得の中間層へ、いつか中小企業・零細企業へ、いつか地方へ、という記載がありました。こうした課題がありました。そこへ新型コロナウイルスの猛威が襲い掛かった。結果、どういうことになったのか。株価、引き続き2万3000円を維持しています。資産は守られている。しかし一夜にして所得が8割、9割消えてしまった、蒸発してしまった方もおられる。ITに対応できる企業と対応できない企業、接触型産業と非接触型産業。間違いなくコロナとの戦いにおいて、格差の問題、これはわれわれ政治の立場から真剣に向き合わなければいけない課題として浮かび上がってきているのではないか、これを感じます。