自民党総裁選 所見演説会(全文3完)岸田氏「1人1人を輝かせるリーダーに」
中間層への支援は各国の課題
この格差の問題については、成長の果実の分配、税制等における分配についても考えていかなければいけない。また中間層への支援というのは日本だけではなくして、アメリカをはじめ世界各国の課題として浮かび上がっています。この中間層への支援、教育、あるいは住宅、こういった部分における支援が最も効果的だ、こういった議論も行われています。最低賃金の引き上げ、こういったものも考えなければなりません。 また加えて、この資本主義そのものについても考えなければいけない、こういった時期が来ています。もうけ、あるいは効率最優先の資本主義。新自由主義というものが批判をされ始めてからも久しいわけでありますが、今、ESG投資ですとか、SDGsですとか、世界的にこういったものが注目をされている。こういった時代にあって、私たちはあらためて人に優しい、公益に資する持続可能な資本主義を考えていかなければいけないのではないか。日本においても昨今、渋沢栄一が再評価されている。こういった動きも、こうした流れの一環ではないかと思います。資本主義というもの、資本と労働、カネとヒト、これが大きな要素だといわれています。このカネの部分ではなくして、ヒトの部分にしっかりと注目をする、分配を考えていく。こういった資本主義、今、考えていく必要があるんではないか。こんな問題意識も持ちます。 また経済においては財政とそして金融、この2つのエンジンでこの経済の成長を引っ張ってきた。しかし持続可能性ということを考えたら、もう1つのエンジン、成長戦略、新しい時代の成長のエンジンをしっかり吹かしていかないと持続可能性、維持することができないんではないか、こんな問題意識であります。
地方にとってのチャンスが巡ってきた
21世紀の石油といわれるビッグデータや、あるいは5Gをはじめとする最新の技術、こういったものをしっかりと結び付けることによって、新しいエンジンをつくる、そしてこういった考え方は地方においても大変有効な考え方であります。 地方においても従来から都市と地方の格差という問題が問題意識としてありました。今、新型コロナウイルスとの戦いの中で、デジタル化、リモート化、あるいはテレワーク、東京や大都市にいなくても働くことができるんだ。あるいは東京や大都市にいなくても情報が得られる、医療や教育が受けられる、これを私たち日本人はあらためて実感をした。これが今の状態だと思います。過度の東京や大都市への集中は、感染症ということとの戦いにおいても問題だ、これも考え直していかなければいけない。こういった意識が広がっている今こそ、地方にとってのチャンスが巡ってきた、こういったことではないかと思います。 データや最新の技術をそれぞれの分野に結び付けることによって、ドローン宅配や自動運転やリモート診療、リモート教育、スマート農林水産業、さまざまな成長のエンジンに、地方のエンジンに結び付けていく、これはチャンスではないか。こういったことを強く感じています。 40年前、田園都市構想という構想が大平総理に打ち出された、こういった時代がありました。田園に都市の便利さを、都市に田園の豊かさを。こうした個性あふれる都市を全国につくろう、こういった構想でありましたが、この構想に40年ぶりに命を吹き込むチャンスを私たちは今、得ているんではないか、こんなことを思います。 そしてこうした成長戦略、あるいはデジタル田園都市構想、こうした構想を考えるにつきましても、わが国の官民挙げてのデジタル化、そしてその上に21世紀の石油といわれるデータをしっかり載っけることによって、こうしたエンジンをしっかりと吹かしていかなければいけないのではないか。 デジタル化を進めることによって、この省庁の垣根を払う、全国、民間にも広げていく、もちろんこれは大事ですが、その上にデータがしっかり載ってこそ成果につながる。よってこの制度の、その組織の、名前はさまざまでありましょうが、私はデジタルの部分についてはDX推進委員会、そして、データの部分についてはデータ庁、こういったものを考えてもいいんではないか、こんなことがいわれています。