具合が悪いのになかなか電話が繋がらずイライラ…「病院の予約」への「AI導入」が医療機関にもたらす変革
電話応答フローをめぐる試行錯誤
ここで当院を例にあげ、病院の電話応対の課題についてご説明しましょう。 患者さんが当院の代表電話にかけてくると、まずは10数人の電話交換手が1次対応を行います。患者さんからの内容をヒヤリングしたうえで、各診療科の計57人のメディカルクラーク(MC)へ申し送りをします。メディカルクラークは2次対応として、 電子カルテで患者情報を検索 ↓ 患者と通話 ↓ 担当医への確認 ↓ 電子カルテへの入力 という流れで進めます。ここまでの平均対応時間は10分30秒(最長19分・最短7分)という結果でした。 こうした電話応答には医療機関ならではの複雑な取り回しもありますが、メディカルクラークは外来診療対応を行っている場面も多く、担当医も目の前にいる患者さんの診察を行っていますので、電話転送が滞留してしまうことがしばしばです。こうしたさまざまな要因が重なって、これほどの時間を要していたのです。 これらの分析結果を踏まえて、当院ではまず予約関連の電話受付を午後だけにしました。メディカルクラークの外来診療対応は主に午前中に集中するため、予約関連の受付時間を午後だけに絞ったのです。 それから、電話交換手の増員と電話回線の増設を行いました。まず1次対応を行う電話交換手は14人から22人体制に増員し、電話回線も計41回線から計73回線に増設して様子を見ることにしましたが、結果はあまりうまくいきませんでした。1次対応の処理能力は大きく上がったのですが、2次対応のメディカルクラークへの申し送りのところで輻輳※が目立つようになりました。 ※インターネット回線や電話回線にアクセスが集中すること
高齢者にオンライン受付
電話応答フローの見直しと並行する形で、もう1つ試みたのがオンライン受付です。ウェブサイト内に外来受診申込フォームを設けて、予約変更・キャンセル・定期受診の予約を受け付けられるようにしました。また、家族や友人との連絡手段として広く浸透したLINE公式アカウントにも外来受診申込フォームと同じ内容を入力できる仕組みを用意しました。 予約関連の電話受付ができる時間は限られていますが、オンライン受付であれば、24時間365日対応が可能ですので、利便性が確保できるのではないかと考えました。しかし結果は、3ヵ月の累計で約200件程度の利用に止まったのです。さらに、その大半がウェブサイトの外来受診申込フォームからのものであり、LINE公式アカウントの外来受診申込フォームの利用はごくわずかでした。 現在、都市部のクリニックなどではオンライン受付が主流となっていますが、当院の患者さんは高齢者が多いため、オンライン受付よりも電話受付を選ぶというニーズが浮き彫りとなりました。