反撃能力の保有「相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる」岸田首相会見12月16日(全文1)
これほどの防衛力強化、政策転換を行う理由は
記者:読売新聞の仲川です。今回の3文書決定により、政府は防衛力の抜本強化を打ち出し、防衛政策を大きく転換されました。防衛費は来年度から5年間の防衛力整備計画における総額が約43兆円と、現行計画の約27兆円から約1.6倍に増えます。また、反撃能力の保有も盛り込まれました。これほどの防衛力強化、防衛政策の転換、こうしたことを行う理由、背景をあらためてご説明ください。 また、新たな国家安保戦略では、中国の軍事動向に関して「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けました。このように位置付けた理由も併せてお伺いします。 岸田:まず1つ目の、防衛政策に関する背景、理由という部分につきましては冒頭の発言でも申し上げたように、わが国を取り巻く安全保障環境、極めて急速に厳しさを増していると感じています。わが国周辺の国・地域においても核・ミサイル能力の強化、急速な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなど、こうした動きが一層顕著になっています。 先ほど申し上げましたが、この1年間振り返っただけでも、5年ぶりに弾道ミサイルがわが国の上空を通過する、また、わが国のEEZ内に着弾する弾道ミサイルもありました。また極超【高速】滑空兵器ですとか、変則軌道のミサイルですとか、こうしたミサイルを巡る技術、これも急速に進化をしています。その中にあっても国民の命や暮らしを守る、政治にとって最も大切な責任をしっかり果たすことができるのかどうか、これはいま一度、真剣に考えなければいけない大変重要な課題であると考えました。
現実的なシミュレーションを行った
これも先ほど申し上げましたが、平和安全法制によって、法律的、理論的にはわが国として事態に対応できる、こうしたものが整っておりますが、その裏付けとなる防衛体制、これが質・量ともに十分なのか、国民の命や暮らしを守るために十分なのか、これを政治としてしっかり考えていかなければいけない。これがこの1年間にわたる議論の背景にあったんだと思っています。こうした国際情勢や考え方に基づいて、防衛力の強化について考えてきた。わが国に対する脅威を本当に抑制できるのか、あるいは脅威が現実となった場合に国民の命を守り抜くことができるのか、現実的なシミュレーションを行った、こうしたことであります。 先ほど3つの例を挙げましたが、それ以外にも、いわゆる継戦能力ということについても、これまで防衛力整備では新しい艦船や航空機などを中心に投資をしてきましたが、十分なミサイルや弾薬、これがそろっていなければ具体的な対応を行うことができない。また、そうしたものについても、何をどれぐらい持てば十分なのかシミュレーションを行い、必要な装備、数量、こういったものを1年間の議論の中で積み上げてきました。 また、部品が不足して動かせない戦闘機や輸送機が数多く存在する。こうした現実の中で、十分な整備費、これも投入しなければいけない。こうした議論も積み重ねてきたわけです。さらには、今後ゲームチェンジャーになりうるといわれている無人アセット防衛能力、こうしたものについても、これまで十分な投資をしてこなかった。こうした分野についても防衛力整備計画の内容、この国を守り抜くために緊急的に整備することが不可欠であるという議論を行い、この文書をまとめた、こうしたことであります。厳しい安全保障環境の中であらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を積み重ねてきたということです。 そして、ご質問の後半の中国についてですが、現在の中国の対外的な姿勢、あるいは軍事動向等については、わが国の平和と安全、および国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上での挑戦と認識をしております。そして、「戦略的な挑戦」としているのは、わが国の平和と安全、および国際社会の平和と安定の確保のみならず、国際秩序を強化する上での挑戦が多岐にわたる分野においてのものである、こういった認識に基づいて、こうした文書の記述とさせていただいております。 【書き起こし】岸田首相会見12月16日 全文2に続く