英国が2024年9月末で石炭火力発電所に終止符 産業革命から250年での大転換
記事のポイント①産業革命発祥の地・英国が2024年9月末に最後の石炭火力発電所を閉鎖する②「脱石炭」は、英国が掲げる2030年までの脱炭素化に向けた大きな一歩だ ③「ワットの蒸気機関」から250年、英国のエネルギー政策は歴史的転換点を迎える
英国が、2024年9月末に同国最後の石炭火力発電所を閉鎖する。2030年までに電力の脱炭素化を掲げる同国にとって、この「脱石炭」は重要な一歩となる。1776年にジェームス・ワットが蒸気機関を実用化し、後の産業革命へと導いてから約250年余り。産業革命の先駆けが自ら石炭に終止符を打つことで、世界のエネルギー政策に大きな影響を与えよう。(オルタナ副編集長=北村佳代子) 石炭火力発電からの脱却は、G7の中で英国が初となる。ドイツは2038年までに、カナダは2030年までに、イタリアはサルデーニャ島を除いて2025年末から石炭火力の使用を止める計画だ。 英国は2021年6月に、石炭火力発電所を2024年9月までに廃止すると宣言した。同年11月にグラスゴーで開催するCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)を控え、当初目標から1年前倒しした。主催国としてのリーダーシップを示した形だ。 しかし、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、欧州全域にエネルギー危機への懸念が高まった。当初、2022年秋に閉鎖を予定していた一部の石炭火力発電所は、政府の要請で運転を継続し、2023年に閉鎖がずれこんだ。 それでも当初の宣言通り、今月末に、英国北部ノッティンガムシャーに位置する最後の石炭火力発電所、ラトクリフ・オン・ソア発電所が閉鎖される。 英国は、2030年までの電力脱炭素化に向けて、着々とエネルギーシフトを進めてきた。1990年には英国の総発電電力量の80%を占めた石炭火力だが、2023年にはわずか1%だ。代わりに、ガス火力が34.7%、風力・太陽光が32.8%、原子力発電が13.8%、バイオエネルギーが11.6%を占める。 歴史を振り返れば、英国では、1769年にワットが蒸気機関を改良し、1780年代に工業生産に使えるように実用化した。この動力の発明が、後の産業革命を導いた。そして1882年には世界初の石炭火力発電所が完成し、同国経済・産業の発展を支えた。 ワットの蒸気機関から約250年。英国の動力は歴史的な転換点を迎える。 次なる脱炭素化のステップとして、今後、さらに再エネ発電比率を高め、ガス火力への依存を減らしていく。そのゴールは、18世紀後半の産業革命前に比べて、世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えていくことだ。