「コロナが終息しても、ずっとリモートワーク」を“ちゃぶ台返し”と悲しむ声も…それでもLINEヤフー「フルリモート廃止」は当然といえる理由
単純な例としては、何か近くでトラブルが起きている際に、自分の担当ではなくても手をさしのべて助けるかどうかは、その相手との心の距離感が関係してきます。日常的に同じ場所で働いていて顔をつきあわせているケースと、リモート画面では顔をつきあわせてはいるけれども異動後にチームメンバー同士が会う機会が少ないケースでは、前者のほうが協力度合は各段に強くなる傾向があります。 またコミュニケーションを通じて創造性が生まれる機会も重要です。職場における雑談にも重要性があって、これは生産性を妨げる要素ではなく、むしろ創造性を生むプロセスであると考えられます。部署が違う社員同士が喫煙所で言葉を交わすうちに、いいアイデアが生まれるという喫煙所効果は、ビジネスの現場では無視できないほど重要な要素なのです。
■GAFAの週3回出社と比べると「微修正」 LINEヤフーの場合、事業部門で週1回、コーポレート部門では月1回と出社要求頻度が異なる背景としては、事業部門のほうがよりチームとしての結束力がビジネスとして重視される側面があるということだと考えられます。 では逆説的に専門社員の場合は結束力はそれほど必要ないので出社しなくてもいいということなのでしょうか? たとえば法務部門の社員などは月1回の出社でいいというのは適正レベルなのでしょうか? コロナ禍以前からリモートでの分業スタイルが定着している開発部門の社員などまったく出社しなくてもいいのではないのかと言われたらどう答えるべきでしょう?
GAFAの場合、チームの結束に加えて2番目の要素として重視されていることが企業文化の維持強化です。専門社員であればあるほど、放置すれば一匹狼に進化するのが自然です。一方でビジネスを遂行する大組織としては組織文化は重要な要素ですし、それが顧客から見ればブランドとして機能します。そのためだけの目的でも専門社員もGAFAでは週3回職場で顔を合わせるという制度には一定の意味があるのです。 このようにフルリモート廃止の理由を整理していくと、次の考察としてLINEヤフーの制度改正はそれでも世界の趨勢と比較すればフルリモートに極めて近い制度への微修正にすぎないことがわかります。週3回勤務が世界の趨勢なのに、月1回で済むのですから、沖縄の先島諸島から勤務している本社勤務社員のような人にとっての影響は軽微に見えます。