なぜ森保Jは大量得点を求められた最下位ベトナム戦を1-0辛勝で終わったのか?
初招集された期待のMF三笘薫(24・ユニオン・サンジロワーズ)、追加招集されたMF堂安律(23・PSVアイントホーフェン)はベンチで試合を終えた。FW上田綺世(23・鹿島アントラーズ)、J1得点ランク首位のFW前田大然(24・横浜F・マリノス)、初招集のDF旗手怜央(23・川崎)はベンチにも入れなかった。 既存の選手たちを突き上げる、世代交代の担い手となる東京五輪代表組に、チャンスすら与えられなかったチームからはダイナミズムが失われた。果たして、敵地のピッチで目立ったのは攻撃面で伊東、守備面では吉田および冨安が持つ「個の力」だった。 例えばオーストラリア戦で負傷退場し、復帰したばかりのFW大迫勇也(31・ヴィッセル神戸)。ポストプレーで伊東の先制点の起点にこそなったものの、負傷の影響からかボールを収められない場面が目立ち、後半30分に古橋と交代した。 ベテランの長友佑都(35・FC東京)は、最初の交代で後半18分にベンチへ下がった。故障以外で最終ラインの選手が代わるには早すぎる時間帯。3戦連続で中山と代えた長友へ、指揮官は「まだまだ走れて、戦えた」とねぎらった上でこう続けた。 「(中山)雄太の特長を生かして守備面を安定させられるし、攻撃面でも左利きという特長を生かして前線へ配球できる。タイミングよく攻撃参加する動きも少しずつ幅を広げている部分で、チームの力になっているので交代枠を使っている」 勝負事に仮定の話は禁物だが、それでも[4-3-3]への習熟度を深めながらコンディションも見極めて、先発メンバーで代えるべき選手もシビアに判断するべきではなかったのか。固定化はチームの停滞感やマンネリ感を招くと東京五輪、そしてオマーンとのアジア最終予選初戦で味わわされた黒星で教えられてもなかなか生かされない。 決勝点となった前半17分の先制弾は、大迫がはたいたボールを受けた南野が左サイドを抜け出し、相手キーパーと最終ラインの間へ送ったグラウンダーのパスを、逆サイドへ飛び込んできた伊東が最後はゴール内に転倒しながら左足で押し込んだ。 一瞬でトップスピードに到達する伊東の加速力は同40分にも異彩を放った。 ベトナムのコーナーキック後に発動されたカウンター。縦パスに抜け出した伊東は左サイドを疾走し、ペナルティーエリアの左角あたりでカットイン。直後に右足を振り抜いてゴール左上を打ち抜くスーパーゴールを突き刺した。 しかし、オフサイドポジションに走り込んできたMF田中碧(23・フォルゥナ・デュッセルドルフ)が、相手キーパーのブラインドになったとしてVARが介入。OFR(オン・フィールド・レビュー)など5分近くを要した末に取り消された。 伊東自身が「まあ、しょうがない」と淡々と振り返った幻の一撃を、森保監督は「レフェリーの判断に異議を言うつもりはないが、2点目を奪った、と言ってもいい形はできていた」と評価しながら、最少得点に終わった90分間にこう言及した。 「ベンチに立っていただければ一番わかりやすいと思いますが、映像で見るよりも非常にタフな試合だった。ベトナムも球際のところで非常に粘り強いチームで、組織的な守備も整備されていた。そのなかでチャンスを作れたことを評価したいと思っているし、追加点をもっと取れるように、次のオマーン戦へ向けて準備したい」