『地面師たち』のNetflix、新鉱脈は生配信 ホットドッグ早食いの小林尊からマイク・タイソンまで
山のように積まれたホットドッグが瞬く間に減っていく――。米国で夏の終わりにあたるレーバーデー(労働者の日、9月2日)の祝日、ラスベガスの競技場に詰めかけた観衆の視線はステージ上で早食い競争に挑む2人の男性に注がれていた。日本が生んだフードファイターの小林尊(46歳)と、米国人の好敵手であるジョーイ・チェスナット(40歳)だ。 【関連画像】ホットドッグ早食い対決に臨んだ小林尊(写真=ネットフリックス) 2000年代、2人はニューヨークのホットドッグ早食い大会で頂上を競い合った。それぞれの事情で同大会から離れたため、直接対決するのは15年ぶりだ。制限時間の10分間で食べたホットドッグは小林が66個、チェスナットが83個。チェスナットが大差で勝つ結果となったが、この対決を「最後の戦い」と位置付けていた小林も自身の記録を塗り替えた。 「(早食い競争が)スポーツとして広がり、いつか大きな舞台でボクシングのような戦いができるようになって、そこに自分が立ちたいという夢があった」。試合に先立ち、小林は報道陣の取材にこう語っていた。「実現できたのは幸せなこと」。対戦後にインスタグラムに投稿した引退宣言で見せた表情は、晴れ晴れとしていた。 実は、この対決を企画・主催したのは米動画配信サービス大手のネットフリックスだ。両選手との交渉やルールの策定といった興行全体を取りまとめると同時に、対戦の様子を特別番組『Chestnut vs. Kobayashi : 究極のホットバトル』として会員向けにライブ配信(生配信)した。 ネットフリックスといえば、最近では『地面師たち』のヒットの印象を持つ人が多いだろう。豊川悦司や綾野剛をはじめとする実力派俳優の起用、過激な描写、日本の地上波放送を大きく上回る制作費といった話題が頻繁に報じられている。13年に配信した『ハウス・オブ・カード 野望の階段』から積み上げてきた自社でのドラマ制作のノウハウが、世界で2億7765万人に上る会員を引き付けているのは間違いない。 それと比べると、今回のホットドッグ早食い対決のようなライブイベントの配信は歴史が浅い。23年3月、米国の芸人によるスタンダップコメディー『クリス・ロックの勝手に激オコ』をメリーランド州の劇場から生中継したのが始まりだ。 一方で、足元の動きは激しい。この1年半ほどの間に、米映画賞の1つであるSAG賞やプロゴルファーとF1ドライバーが組んで競う『The Netflix Cup』などをライブで流した。11月にはボクシング界のレジェンドであるマイク・タイソンと、有名ユーチューバーのジェイク・ポールの対戦も配信を計画する。さらに米プロレス団体ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)と10年間で50億ドル(約7300億円)の契約を結び、25年から主力番組『Raw(ロウ)』を生中継する権利を手にした。