木造建築の傑作「海の博物館」、用途未定の「紀尾井清堂」… 日本を代表する建築家・内藤廣作品の美に驚く
日本各地の文化施設・公共施設を数多く手掛けてきた内藤廣さん。今回は「海の博物館」から用途未定の建築として話題を呼んだ近作の「紀尾井清堂」まで、代表的な12作品をご紹介します。 【写真29枚】あの「渋谷駅」も! 建築家・内藤廣が手掛けた、話題の建築物を巡る旅 その土地の風景になじむ建築の佇まいや、大空間を実現する屋根架構の美しい構造デザインなどにご注目ください。
建築家・内藤廣さんとは?
950年神奈川県生まれ。学生時代から建築専門誌『新建築』の「月評」と呼ばれる評論欄で執筆し、建築家としてデビューする前から建築界で存在感を放っていた内藤さん。早稲田大学大学院終了後は単身スペインへ渡り、建築家のフェルナンド・イゲーラスのもとへ。帰国後は恩師である吉阪隆正の勧めで菊竹清訓建築設計事務所に入所します。 1981年に独立し、1992年に竣工した「海の博物館」が日本建築学会賞作品賞を受賞。その後も文化施設・公共施設などを中心に数々の建築を手掛けていきます。2001年には東京大学大学院工学系研究科社会基盤学(土木)助教授、2002年には同大学の教授、2010年には副学長に就任。建築、都市、土木の領域を跨いで活動し、2011年には同大学の名誉教授に。 東京駅丸の内駅前広場と行幸通りの再整備では、全体のデザイン方針の立案・デザイン指導を担いました。そのほか2007~2009年にグッドデザイン賞の審査員長を、2023年4月からは多摩美術大学の学長を務めるなど、幅広い領域で活躍する建築家として知られています。
紀尾井清堂/東京都
用途未定という異例のリクエストで設計された話題作。1辺15mのコンクリートキューブをガラスで覆ったファサードが特徴的な建築です。 1階はがらんどう、2~5階は巨大な吹き抜け空間と、今後、依頼者のリクエストに沿うかたちで、さまざまな用途で使える大空間としてつくられました。 杉板型枠によるコンクリート打ち放しの躯体や、石州瓦をつくる焼成窯の棚板の耐火レンガを再利用した床仕上げなど、質感豊かな素材使いも印象的です。 「パンテオンのような常識に縛られないもの」を目指して設計されたそうで、9つのトップライトから差し込む光が照らす空間からは、神々しささえ感じられます。 2024年12月現在、一般公開されていませんが、過去には東日本大震災を耐え抜いた松の根を展示した「奇跡の一本松の根」展の会場になりました。まれに見学会や展覧会が行われることもあるため、機会があればぜひ訪れてみたい建築です。 所在地:東京都千代田区紀尾井町3