木造建築の傑作「海の博物館」、用途未定の「紀尾井清堂」… 日本を代表する建築家・内藤廣作品の美に驚く
鳥羽市立海の博物館/三重県
次にご紹介するのは、内藤さんの建築家としての出世作となった「海の博物館」。 海民(海女や漁師、船乗りなど)の歴史を伝える施設で、木造船など2024年現在約63,000点(内6,879点が国指定重要有形民俗文化財)もの漁にまつわる民俗資料が収蔵されています。 なかでも展示棟の集成材でつくられた大空間が象徴的で、建設された1990年代当時として斬新なその構法が高い評価を得て、日本建築学会賞作品賞を受賞しました。昨今脚光を浴びている木を使った現代建築の先駆け的存在ともいえるでしょう。 所在地:三重県鳥羽市浦村町 大吉1731-68
高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設/岩手県
東日本大震災からの復興の象徴となる国営追悼・祈念施設。 この公園を俯瞰すると、2つの軸線が浮かび上がります。津波の襲来した広田湾方向と津波が遡上した気仙川上流部分を結ぶ「祈りの軸」と、津波で大きく損傷した旧道の駅「タピック45」・東日本大震災津波伝承館・地域振興施設・新道の駅「高田松原」を繋いだ「復興の軸」です。 この直交する軸線の交点には、トップライトから光が差し込む印象的な水盤があり、そこから「祈りの軸」の先には、式典が行われる広場、「献花の場」、「海を望む場」が設けられています。 祈りの場であるこの公園の構成は、原爆ドーム、原爆死没者慰霊碑、平和記念資料館本館を結んだ「平和の軸線」が象徴的な、丹下健三が設計した「平和記念公園」とどこか重なります。 所在地:岩手県陸前高田市気仙町土手影180
その土地土地の風景のなかに、どのような形で造形し配置するかを入念に考え抜かれた数々の内藤建築。数十年の時を経てもその佇まいは古びず、その風景を魅力的に彩っているようにも感じます。 今回ご紹介した以外にも、内藤さんが手掛けた公共建築は日本各地に存在します。お出掛けや旅行の際には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。