「誰もが他人を傷つけずに自分らしくあるべき」――イタリア発Z世代ロックバンド「マネスキン」が打ち破るタブー #なぜ話題
セクシュアリティーの公表は、「自分らしく生きて大丈夫」と示したかったから
ヴィクトリアはバイセクシュアル、イーサンはジェンダーにとらわれない立場を公言している。それもまた「日本ではあまり見られないタイプのアーティスト」の要素だ。 ヴィクトリア:成長していくなかで自分のことが分かってきて、家族や友人にはすぐに話した。初めて女性と付き合った時もみんな応援してくれた。セクシュアリティーの公表を躊躇するアーティストがいるのもよく分かる。でも、多少なりとも公人であれば、恥じるように隠すべきじゃないと私は思う。私がデビュー前からセクシュアリティーを公言してきたのは、「自分らしく生きて大丈夫」と示したかったから。自分が何者かを知ることは素晴らしいこと。ストレスをため込む必要なんてない。
イーサン:そもそも“クィア”とは“普通と違う”という意味の言葉だけど、じゃあ何と違うの? 普通って何? と思うよ。保守的な人から「自分の考えとは違うから」と差別を受けることもあるけど、その人にとって普通なことが世の中でもどんどん普通になってほしい。僕らはそこをサポートしていきたいんだ。 ヴィクトリア:10年前は公に話すこともタブーだったけど、最近はジェンダー平等や心の健康についてみんなが当たり前のように話すようになった。状況は改善されていくと思うし、そうなることを願っている。 マネスキンはバンドの総意として、ジェンダーやセクシュアリティーを固定的なものではなく文化を構築する要素のひとつとして捉え、その姿勢を取材やSNSを通じて発信し続けている。 ダミアーノ:みんなで「こう発信しよう」と相談したことなんて一度もない。僕はカツサンドが好きだけどトーマスはお寿司が好き。それと同じくらい自然なこと。そうせずにはいられないからやっているだけだ。 トーマス:着たい服を着る。塗りたいネイルを塗る。やりたいことを自由にやる。それを大事にしているだけさ。
ダミアーノ:ライブの客席には、「自分もヴィクトリアと同じでバイ」と書かれたボードを掲げてアピールしてくれるファンもいる。僕らは「誰もが他人を傷つけずに自分らしくあるべきだ」という意見を発信していきたい。例えば僕自身の白人男性という属性はこれまで社会で発信され続けているから、もっとそうではない人たちが表に出ていくべきだと思う。さまざまな作品のなかで黒人やゲイの人たちがもっと語られる機会があっていい。それでこそ社会の実像が正しく反映されると思う。権力の交代も必要で、それによって問題は少なくなっていくはずだよ。