「ダイエット」に「トカゲの毒」が使われるなんて…ノーベル賞の呼び声もある夢の「痩せ薬」セマグルチド、その「衝撃の全貌」と「本当の効果」
夢の痩せ薬セマグルチドの誕生
そして、より分解されにくくより長時間作用し、ヒトのGLP-1にかなり類似した薬が開発され、「セマグルチド」として誕生したのです。 なお、セマグルチドの投薬期間が長くなればなるほど、体重は減りますがその効果には、限度があります。5ヵ国の施設において、計304人を対象にした研究が行われたのですが、投薬開始から約60週間後に体重減少が頭打ちになることがわかりました(※参考文献7-16)。つまり、セマグルチドを投与し続ければ、当たり前ではありますが、ずっと痩せ続けるというわけではありません。これには、薬への耐性ができる、急激に体重が減るため代謝が落ちるなど、さまざまな可能性が考えられます。 また、体重の減少が頭打ちになったあとにセマグルチドの服用を止めると、1年後には体重が若干戻ります(※参考文献7-17)。つまり、GLP-1受容体作動薬は、肥満症治療のための特効薬ではなく、体重の減少と食欲の減退を後押ししてくれるけれども、その状態を維持するためには、やはり治療を受けている本人が生活習慣に気を配ることが大切です。 ※参考文献 7-16 Garvey WT et al., Nature Medicine 28, 2083-2091, 2022. 7-17 Wilding JPH et al., Diabetes, Obesity and Metabolism 24, 1553-1564, 2022. * * * 初回<なぜ「朝の駅」のトイレは混んでいるのか…「通勤途中」に決まって起こる腹痛の正体>を読む
坪井 貴司(東京大学大学院総合文化研究科教授)