透き通る琥珀色の調味料「白しょうゆ」 愛知・西三河の隠れた逸品の魅力とは?
碧南のしょうゆづくりは「白くする工夫の積み重ね」
家庭では、どのように白しょうゆを料理に取り入れたらよいのだろう。しょうゆづくりの盛んな小豆島に生まれ、全国の蔵を訪ね歩いてしょうゆや蔵人の情報を発信し、作り手と使い手を結び付けてきた醤油ソムリエールであり、現在は碧南市に近い西尾市と小豆島での二拠点生活をする黒島慶子さんに聞いた。 しょうゆは色の濃い順に、たまり、再仕込み、濃口、淡口、白。「色が淡くなるほど食材の香り、色、味を楽しめ、濃くなるほどしょうゆの香りや味をのせて楽しめます」 色の違いは、材料や醸造期間などによって生じる。材料の小麦と大豆の割合が、たまりはほとんどが大豆。再仕込み、濃口、淡口は50対50、白は80~95%が小麦となっている。醸造期間は白が2~3カ月と濃口の1~3年より短い。白は、旨みのもとになる大豆の使用量が少なく、醸造期間も短いため、旨みはほかのものに比べると少ない。しかし、「醸造期間が短い分、麹のやわらかい香りがして、小麦由来の甘みがあるのが特徴。使っている塩が多いのでゆっくりと熟成が進み、旨みが少ないといっても酵素分解されてちゃんと旨みも出てきます」と黒島さんはいう。 「白」と名乗るために、製造過程ではほかのしょうゆにはない方法も取り入れている。黒島さんは「白くするための工夫の積み重ね」でできていると語る。たとえば、大豆はしょうゆの色を濃くするので使用量を少なくするだけでなく、仕込み前に一粒一粒の皮を取り除く。皮ができあがりの色を濃くする要因になるからだ。ほかのしょうゆでは当たり前のように行われる、醸造中の攪拌も行わない。桶の中を混ぜると空気が入り、発酵が進んで色が濃くなるためだ。こうして醸造した白しょうゆだが、1回目にできたものはすぐ製品にならずストックしておく。そして醸造期間が短すぎて完全に分解しきれていないもろみを再利用して2度目の醸造を行う。この1回目と2回目の白しょうゆをブレンドするのが碧南の伝統製法だ。これによって色や味のバランスが取れた「製品」ができ上がる。