日本社会の変化「まだまだその途中」伊藤詩織さん会見7月20日(本文3)
問題提起をできなくさせてしまうのではないか
東京新聞:望月です。2点ほどなんですけど。まず負けてしまったので今回ドラッグの可能性について指摘した文が削除されなければならないという方向のようですけれども、それを聞くと、結局そうはいいながら、警察庁は詩織さんが『Black Box』を出したあとに通達で、全国の通達で、記憶がないとか、そういう方に対してはまず検査を行うこととか、現場の警察官に対する通知を出されていますよね。そしてその辺りでは朝日新聞をはじめ多くのメディアが、デート・レイプ・ドラッグを使われたんじゃないかというような可能性のある事件について、匿名も含めて、いろんな事例を企画なんかで出していたことを覚えていて。やはりあの『Black Box』が出たことで、現実的にこういった被害が至る所であるんじゃないかっていうことが非常に喚起されたと思うんですね。それを今回の判決というか、確定判決によって削除されてしまうってことは、そもそも非常に大きな問題提起をできなくさせてしまうということになると思うので、その点についてもう一度、一言ずつ、伊藤さんと、佃先生か山口先生に言っていただきたいのと。
権力とメディアの記者の近さをどう思うか
それから山口さんに関しては、当時、安倍さんに最も食い込む男性記者として非常に有名でありました。私がびっくりしましたのは、「新潮」の田中さんたちが書いていた記事で分かりましたけども、彼が不起訴処分になったあとに、菅さんと非常に懇意にしている、ぐるなびの創設者が経営している関連会社、交通広告の関連会社のところに、会社の中の話によると、内々の指示で面倒を見てあげてくれということで、『週刊新潮』の記事が出るまで、不起訴処分のあと、彼を顧問的な形で、確か50万とか何十万かの月額の顧問料を払ってたと、報道が出たことでその顧問契約は取り消されたというのが出たんですが、ああいった一連の報道を見ていますと、官邸と、それにまつわる、いわゆる政治部記者、ここで政治部という言い方はあれですけども、官邸クラブに非常に、入っていて、官邸に食い込んでた記者と、やっぱり権力側との、ちょっと怖いほうでの癒着というのが非常に浮き彫りになった事件だったと思っています。これはもう私も含めた記者クラブ内にいる記者が非常に自戒を持って、権力者と向き合うときにどう彼らと付き合い続けるかってことを考えなきゃいけないってことだと思うんですけれども。 何回も聞いているんですが、中村さんが逮捕しなかった理由に、オフレコのコメントの中で、それは山口さんだからということではなく、やはり記者クラブの記者たちだから、もし不起訴にした場合、これは報道の自由の侵害だということで逆に訴えられかねないと。だからおまえたちがもしそういう目に遭っても同じように対応したんだという。外には出せないような話がやはり出ていたというのを聞いています。権力とやはりメディアの記者の人たちのこの近さとか、ここに対してどういう問題提起を、今回の判決も含めて、言いたいかというところも1点、すいません、お願いします。 山口:1点目の、今後、被害を訴えられなくなっちゃうんじゃないかというところについて少し詳しめに話しますと、伊藤さんと上告審でこの部分やりましょうという話になったときに、伊藤さんに、これが話せなくなるとどういうところが嫌ですかっていうふうに面談で聞いたんですね。