「大阪都構想」そもそも何? 住民投票まで1か月
一方で、これまで府と市に分かれていた広域政策を大阪府(都)に一本化し、大阪府(都)庁という政策官庁が関西全域も視野に入れながら都区一体で大阪を経営していく。それが都区制度移行の意義である。 大阪の場合、人口275万人の大阪市を廃止後に設置される4つの特別区は、公選首長、議会を持つ60万~75万規模の中核市並みの権限を持ち、東京23特別区より遥かに権限が強く仕事のできる仕組みが予定されている。この特別区は住民生活の拠り所となることが見込まれており、そこを拠点に教育、医療、福祉、まちづくり、中小企業支援など住民に身近な地方自治が営まれることになるだろう。 これまでの大阪市に置かれた24行政区は市役所の出張所に過ぎない。住民の窓口としては便利だったが区長以下すべてが公務員であり、大「大阪市」のブランチ(支所)に過ぎなかった。これからの高齢社会一つとっても特別区移行で身近な小回りの利く基礎自治体が頼りになり、特別区間で政策競争、まちづくり競争、経営改革競争が興るとサービスの質が向上しコストが下がるなど住民へのメリットは増す。 ビジョンを掲げ、大都市を率いるリーダーシップを強化する視点から、大規模インフラの整備や都市開発、成長戦略などは大阪府(都)に集約される。大阪全体で見ると、面積も狭く過密に喘いできた大阪市内だけでなく、他の42市町村も含め広い視野に立って広域政策が展開され、司令塔の一本化、政策の一体性が確保されることになる。 こうして大阪の行政は、大きな経営が可能になると同時に、大幅にムダの削減ができ、賢い小回りの利く自治体の活動で、行財政の合理化が図られ、経済成長につながることから東京と並ぶ「強い大阪」再興の可能性が高まる。
住民に「十分な判断材料を」
もっとも住民投票を直前に控えている大阪市民にとって、「伝統ある大阪市の名称がなくなる」「行政のムダは本当に減るのか」「経済成長につながるのか」「行政サービスは本当に向上するのか」など、漠然と不安や心配の気持ちを抱く人たちもいる。前回の投票で「反対」が上回った一因とも言える。