「大阪都構想」そもそも何? 住民投票まで1か月
メリットとされる「行政のムダがなくなる」「大阪の経済成長につながる」「サービスがよくなる」という話や「大都市大阪がなくなるのではなく行政の仕組みが変わるだけ」という制度上のことについて、推進する立場にある当局は住民の不安や懸念を払しょくする、「より丁寧で」「よりきめ細かな」説明が求められる。 コロナ禍が収まらない中での説明方法に限界があるとはいえ、最大限の注力をし、住民が十分な判断材料をもとに投票の日を迎えることを期待したい。
他の自治体のモデルケースにも
日本には他に人口380万人を超える横浜市や200万人を超える名古屋市という大阪市並みの大都市がある。大阪で行われようとしている二重行政の解消や二頭立て政治からの脱却という改革とこれら大都市が内包する構造問題は無関係とはいえない。早晩、何らかの改革の動きが出てこよう。 ただ、大阪の場合、香川県に次いで2番目に県域が狭い。都市構造上多くの機能が大阪市に集まるような地理的形態から府と市の施設などが重なりやすく、他の府県と政令市が抱える二重行政などの問題がより鮮明に現れている。そのことが他に先んじて大阪改革が起きている背景と言えよう。併せて維新政治と言われる改革志向の強い地域政党が興り、それがけん引力になっている面も見逃せない。 ほかに100万人を超える政令指定都市はいくつもあり、大阪改革は改めて府県制度と政令市のあり方を捉え直すインパクトとなるのではないか。 それ以上に「元祖・東京都」において、70年以上経つ東京の特別区と都政のあり方にも一石を投じる可能性がある。仮に大阪都構想が住民投票で多数の支持を得たとなると、特別区に中核市並みの権限や仕事を持たせた大阪特別区が一つのモデルとなり、より強い権限を持つ東京特別区への脱皮を求める動きが出てくるかも知れない。
「大阪の問題」を超えて
最後に改めて大阪都構想を要約すると、これまでの府市合わせ(不幸せ)と言われた大阪府と大阪市のせめぎ合いによる二重行政をなくし、浮いた財源で医療、福祉、教育を充実し、いじめ、虐待、犯罪などの防止を図る。275万人をカバーする巨大大阪市を廃止し、それに代えて基礎自治の部分は公選制の特別区を4つ創設し地方自治の充実を図ること。 一方で、大都市戦略、インフラ整備や産業政策、高度医療、研究機関、港湾管理、上下水道、大規模施設の整備などの広域政策は都(府)に一本化し、国際的な都市間競争に打ち勝つ戦略本部・大阪都庁がその任に当たることになる。 住民投票は「大阪百年の大計」につながる選択だ。大阪の地域的な課題の枠を超え、「新たな国づくり」の選択という側面もある。 大阪都構想は、地域の課題でありながら、東京一極集中を緩和させ、有事の際には「副首都」として機能できるようリスクヘッジを行う必要があるという、日本の国づくりの大きな課題でもある。その意味で、投票結果は大阪住民だけでなく、全国に何らかの影響を与える。