「移民・難民をアフリカの収容所へ」......知られざる欧州の国々の「転換」、受け入れの理念から強硬策へ
ヨーロッパが移民・難民問題で転換点を迎えている。ドイツをはじめ、これまで寛容な外国人政策をとってきた欧州連合(EU)や加盟国の多くが、厳格な出入国管理や送還の促進に舵を切り始めた。 アフガニスタンやアフリカ諸国の政情不安やコロナ禍の収束などの要因が重なって、新たなEUへの難民流入の波が生じており、EU全体では2023年の難民認定申請者数は112万9000人に達した。 2015年に132万人、2016年に120万人が難民申請し、「難民危機」と呼ばれたが、それ以降の最多となり、EUが共同して対処する必要性も増している。
■不法移民を送り込む「ハイブリッド戦争」 ポーランドのドナルド・トゥスク首相は10月12日、党首を務める政党「市民プラットフォーム」の大会で、難民の庇護申請権を当面棚上げにする、と宣言した。トゥスク氏は、「不法移民を制限したい。ヨーロッパ次元でこの決定の承認を求めようと思う」と述べた。 トゥスク氏はリベラル派で、EU大統領を2014~2019年務めただけに、その発言は大きな反響を呼んでいる。強硬発言の背景には、ベラルーシやロシアからの不法移民流入が、ポーランドにとって安全保障上の脅威になっていることがある。
ポーランドの報道によると、2024年5月、ベラルーシから不法入国しようとする人の数は7100人となり、2022年同月の913人、2023年同月の1900人から激増した。国境のフェンスを越えようとする不法入国者を阻止しようとした兵士がナイフで刺され死亡する事件も起き、国民世論は強く反発した。 ベラルーシ、ロシアは、ビザを発給して中東やアフガニスタンの人々をいったん自国に入国させ、それからポーランド国境に向かわせており、ポーランドはEUの混乱を狙った「ハイブリッド戦争」を仕掛けていると見ている。
ポーランドは来年に大統領選挙を控え、トゥスク氏には不法移民問題で強い姿勢を打ち出さないと、保守色が強い野党「法と正義」に対抗できないとの危機感があると見られる。 EU加盟国が難民受け入れ制限に踏み切る際、モデルとして持ち出されることが多いのがデンマークの難民政策だ。 デンマークは2019年の「パラダイムシフト法」によって、難民政策の重点を支援削減や送還促進に移した。それまではデンマーク社会への統合を図ってきた難民を、一時的に滞在しいずれ母国に戻る人々として位置付け直した。