「移民・難民をアフリカの収容所へ」......知られざる欧州の国々の「転換」、受け入れの理念から強硬策へ
デンマークはEU加盟時に司法・内務協力分野はオプトアウト(opt-out=適用除外、留保)しており、EUの難民の割り当てを受け入れないなど、もともと難民問題について独自の政策を取っている。 ■右派政権が政策転換 スウェーデンはドイツと並んで寛容な難民受け入れ策を取っていたが、2022年10月に発足した右派連合政権が、デンマークをモデルに「パラダイムシフト」を掲げ、移民・難民政策の転換を進めている。
具体的な政策は、移民労働者は一定水準の給与を得られなければ在留を認めない、家族の呼び寄せを制限、送還を促す支援金の増額――などである。人権団体などからの批判を浴びながらも効果的で、2024年の難民申請者数は2000年以降最小となり、スウェーデンへの流入者は流出者を下回るまでになった。 オランダも、2024年5月に右派ポピュリズム政党「自由党」主導の内閣ができたことに伴い、家族呼び寄せの制限、国境管理強化、公共住宅の優先的な割り当て廃止など、移民・難民政策を厳格化した。EU共通難民政策からのオプトアウトも求め、9月、EU委員会に通告した。
ハンガリーもそれにならい、9月、EU共通難民政策からオプトアウトする方針を明らかにした。 ドイツについては、『ドイツが転向を迫られた「移民難民問題」の深刻』で詳報したが、憲法に規定された「個人の基本権としての庇護権」の廃止を提言する保守系政治家も現れている。 一般的に難民の庇護を与えるのはあくまでも「受け入れ国の権利」だが、ドイツは憲法(基本法)16条で庇護権を「個人の基本権」とするなど、難民救済に手厚い原理的立場をとっていた。圧政を逃れる政治亡命(庇護、難民申請)は個人の自由を保障するために重要という、ナチ・ドイツの経験から生まれた、いかにもドイツらしい規定だった。
しかし、難民申請者の急増に対応するには、この先進的な規定の見直しもやむを得ないとの意見が提起されるようになっている。庇護権が個人の基本権であれば、難民申請を受理せざるを得ないが、基本権ではないことにすれば、受け入れ数の上限を決めることができ、社会的弱者を優先して直接受け入れる余裕も生まれるという。 ■南太平洋やアフリカに収容施設 さらに、EU加盟国に広がっているのが、国外(EU圏外)に収容施設を設置する動きだ。