【前編】「不登校ビジネス」何が問題視されたのか 「わらにもすがる思い」孤立し不安に陥る保護者
板橋区での騒動を機に広がる「不登校ビジネス」の議論
板橋区と不登校支援事業者・スダチとの連携に関するトラブルに端を発し、いわゆる「不登校ビジネス」の問題に注目が集まっている。小・中学校の不登校が11年連続で増加し、34万6482人と過去最多(文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)となる中、教育現場はさまざまなリソースも活用しながら支援に当たる必要に迫られているが、外部団体との連携にはどのようなことが求められるのか。前編では保護者の視点から、不登校ビジネスを捉えてみたい。 【写真で見る】板橋区と不登校支援事業者・スダチの一連の騒動とは? まずは、不登校ビジネスがSNSやメディアで盛んに取り上げられるようになった経緯について、おさらいしよう。事の始まりは、2024年8月5日、民間事業者のスダチが「板橋区と連携し、区内の特定の小学校を対象に、スダチが展開するオンライン再登校支援を実施する」と発表したことにある。同社はこれまで自社のHPで「不登校を3週間で解決する」とうたい、不登校の子を持つ保護者に再登校支援サービスを提供してきた事業者だ。 同社の発表後、SNSでは賛否両論が飛び交う事態に。当初は「一部の学校で試行を始めた」と認めていた板橋区教育委員会も、批判の高まりを受けて「そうした事実はない」と否定に転じた。スダチもまたプレスリリースを削除。連携は白紙となった。 一方8月15日には、この一件を重く見た不登校支援関連の市民団体や有識者などが、連名で板橋区に公開質問状を提出。同区は、9月に区HPと公開質問状への回答を通じて、スダチとの一連の経緯についての説明と、「『学校に登校する』という結果のみを目標としない」等の従来の区の不登校方針が変わらないことを公表した。 しかし、騒動は収束した形となったものの、これを機に不登校ビジネスの是非を問う議論が広がり、今もなお教育界や社会全体に波紋を投げかけているのだ。 今回の騒動でクローズアップされたのはスダチだが、再登校支援のサービスを提供する事業者はほかにも複数存在する。なぜこうした不登校ビジネスが、問題視されたのか。