新しいeスポーツの生みの親は「ゲームが苦手」な理学療法士 年齢や性別、障がいの有無に関係なく楽しめる
コロナ禍をきっかけにリハビリ施設を退職
専門学校を卒業後は精神科病院を皮切りに、介護施設、病院、介護施設が運営する脳卒中患者のためのリハビリ施設で約15年間働きました。 ところが2020年春、世界をコロナ禍が襲います。医療・介護の現場でスタッフは疲弊。面会制限が始まり、高齢者のレクリエーションや施設外へのお出かけ、イベントはすべて中止になってしまいました。 池田「当時の現場は本当に暗かったですね。そのとき、ふと『辞めよう』と思いました。その代わり、15年間医療・介護の現場で働いてきたことを活かして業界への恩返しになるような楽しいことを始められないかと考えました」 2020年4月に退職した池田さん。ただ、具体的なビジネスプランはなかったため、「しばらくはニートのような状態だった」と当時を振り返ります。そんなとき、池田さんは偶然「eスポーツ」という言葉を目にしました。 池田「eスポーツという言葉自体も知りませんでした。調べてみて、コンピューターゲームを使って複数人で対戦する競技のことなんだと知りましたね」 しかし、池田さんはゲームが得意なわけではありませんでした。 池田「どちらかというと苦手です。子どものころから外で遊ぶほうが好きだったので、唯一プレーしたことがあるのが『バイオハザード』のイージーモード(笑)。ですが、eスポーツは高齢者の認知症予防や孤独の解消、世代間交流にいいんじゃないかという直感がありました」
その後もeスポーツについて調べ続け、熊本eスポーツ協会の存在を知った池田さん。協会に「自分は理学療法士で、eスポーツは高齢者にいい影響があるんじゃないかと思っています。情報交換できませんか」と投げかけたところ、思わぬ展開がありました。 池田「美里町が高齢者の介護予防を目的にeスポーツを活用したいと言っている、と教えてもらったんです。 当時はゲームもeスポーツのこともわかっていませんでしたが、『長年、介護の現場にいたので高齢者のことは得意です』とお話しして、美里町に熊本eスポーツ協会さんと一緒にプレゼンをさせてもらうことになりました」