シューズもラケットも遠征交通費も自腹を切る…「先生が教える部活」が限界を迎えつつある3つの理由
■労働に見合う対価が支払われていない また、必然的に帰宅が夜遅くなることもしばしばです。大会となると、土日両方、さらには3連休すべて大会で拘束されることもあります。5月のゴールデンウィークなど半分以上は部活動の予定が入っていました。これは夏休みや冬休みといった長期休暇中であっても同様で、大会が近くなると土日は部活動優先です。年によっては新年最初の土日が大会となって家を空けることもあります。正月なのに……と複雑な気持ちでした。 上記のように、平日は2時間程度が毎日、休日も通常は土日片方の午前中、大会や練習試合だと全日勤務です。総労働時間は凄いことになってきます。平日の部活動だけでも時間外労働が月に40時間は発生しています。部活動の影響であとまわしになった事務処理や授業準備も含めると、相当な時間です。ここまでくると家庭での教材研究も含め、仕事と日常の境界線もつけられなくなってきます。 「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和46年法律第77号)」(給特法)により、教職員調整額が月あたり給料月額の4%発生するとはいえ、時間外労働に対する手当(残業手当)は出ません。 私は教員になる前に一般企業に勤めていましたが、そのときは1分単位で手当が発生しました。労働には必要な対価を支払う。これは当然のことではないでしょうか。 一方では、教員の働き方や仕事の特性上、容易に一般企業と同様の時間外手当について当てはめることができないことは認識しています。 ■持続可能な働き方まではまだまだ遠い 近年では、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(スポーツ庁2020年)によると、次のような方針が示されました。 ---------- 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。(平日は少なくとも1日、土曜日及び日曜日(以下「週末」という。)は少なくとも1日以上を休養日とする。週末に大会参加等で活動した場合には、休養日を他の日に振り替える。) ○長期休業中の休養日の設定は、学期中に準じた扱いを行う。また、生徒が十分な休養を取ることができるとともに、運動部活動以外にも多様な活動を行うことができるよう、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。 ○1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末を含む)は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う。 ---------- これによって、現場の教員の負担も少しずつ改善してきたと思います。自分自身も年々、部活動による時間外労働が軽減されてきたように感じます。しかし、持続可能な働き方という点では、まだまだ改善点があるように思います。教師を目指す後進の育成のためにも、そして現場で働く教員のさらなる負担軽減のためにも、より良い部活動運営のあり方を見直す岐路となっているのはないでしょうか。