シューズもラケットも遠征交通費も自腹を切る…「先生が教える部活」が限界を迎えつつある3つの理由
■“持ち出し”が多く、わずかな手当が相殺 ③金銭的負担の大きさ 「なんで教員ってそんなに仕事のものを自分のお金で買うの?」 これは一般企業で働く妻から、結婚当初に言われた言葉です。私も、社会人を一般企業で始めたこともあり、その違和感は長らく覚えていましたが、口に出せないままでいました。このひと言を言われてから、改めて教員の特異性について感じています。 とくに、その一面が強いのが部活動であると私は感じます。一般的に、土日の部活動に出勤する場合、部活動指導手当――自治体によっては特殊勤務手当――という形で、指導に当たった時間に対して金額が定められています。 しかし、これは1時間あたりに換算すると、最低賃金を下回っているケースがほとんどです。 これに加えて、以下に記す金銭的な負担もあります。これだと“持ち出し”になり、土日の部活動での勤務の手当がほぼ残らない場合もあります。それを踏まえてお読みいただきたいです。 ここで私の経験や知人の体験を踏まえた“持ち出し”の具体例を挙げます。すべてが私の経験に基づいたものではないことをご承知の上、お読みください。 ■道具一式を経費ではなく自腹で購入 まずは、指導に際しての準備についてです。私が部活動指導を始める際、顧問として割り振られた競技に必要な個人用の道具一式を購入する必要が出てきます。それはすべて自己負担です。たとえば、シューズ(競技によってさらに異なります)やラケット、グローブ、練習着など……。 「すべて揃える必要性はないのでは?」という意見もあって当然です。しかし、現場では「若い教師は生徒と汗を流してともに成長するべき」という意見が主です。いまだにこの風潮が根強く教育界にはあります。そのため、生徒と一緒にプレーしながら指導をすることが求められます。 私はこの意見に反対というわけではありません。むしろ賛成です。同じ時間を共有して一緒に苦楽をともに過ごすことで、一体感が生まれ、その過程で生まれる感動を味わうことができると考えます。また、実際にプレーしてみることで、その競技のことを理解し、実体験が伴った指導になり、指導に説得力が増すと思います。 しかし、これはあくまで「仕事」です。「ボランティア」ではありません。仕事に必要な道具類は「経費」として計上するのが一般的な考え方ではないのでしょうか。顧問を始めるための、必要最低限の準備に関して、金銭的な保障が必要だと思うのは、私だけでしょうか。