シューズもラケットも遠征交通費も自腹を切る…「先生が教える部活」が限界を迎えつつある3つの理由
神戸市が2026年度から公立中学校の部活動を終了すると発表した。全国的に部活の外部委託が進んでいる背景には、教員の働き方改革がある。茨城県で中学校教員をしている根本太一郎さんは「自分自身、中高生のときは部活に入っていたので、部活指導は教員として当然の職務だと思っていた。しかし、3つの理由から負担に感じることが増えている」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、永井崇・根本太一郎『学校は甦る その現状と未来を考える』(育鵬社)の一部を再編集したものです。 ■「先生の指導は受けたくない」という厳しい声 ①専門外のスポーツを指導する難しさ 私は、現在の勤務校を含め、四つの学校を経験してきました。うち2校(初任校とその次の赴任先)では、未経験のスポーツの指導を任せられました。ここでは初任校でのエピソードを紹介します。 一番に始めたことは一からそのスポーツを覚えることです。まずはルールです。指導に関する教則本的なものは書店に行くと多く並んでいます。そういった本を何冊か購入し、読みながら「指導」しました。 また、プレーしてみないとわからないので、生徒と一緒にプレーしてみて、学びとりながらアドバイスをしました。 とはいっても生徒は実際に試合に出ているので、私よりも知識や経験が豊富です。最初はなんの役にも立てないという虚無感でいっぱいでした。一部の生徒から、「先生の指導は受けたくない」と言われたこともありました。ほかの生徒を通じて理由について探ったところ、その生徒は、「経験のない先生からアドバイスを受けたくない」という考えをもっていたようでした。 自分としては精一杯アドバイスをしていたつもりでした。しかし、だいぶ的外れなことを言っていたり、生徒の現状に合っていないことを言ってしまったりと当時は反省しました。同時に、生徒に寄り添いながら専門外のスポーツを一から教えることの難しさに直面しました。 ■初心者ながら、探り探りで指導に当たる 部活動は拘束時間も長く、指導がうまくいかないという葛藤を抱えながら過ごすことは精神的な重荷で、部活動の時間を憂鬱に思えることも少なくありませんでした。 一方で、乗り越えることができたのは生徒のお蔭でした。未経験であってもグラウンドに顔を出すと、「一緒にやりましょう」「審判してくださいよ」などと声を掛けてくれました。 そのとき、自分の居場所はここにあるのだと改めて実感しました。この子たちのためになんとか頑張らなくてはと心を奮い立たせたことをいまでも思い出します。 それからは少しずつルールを覚えたり、YouTubeなどに上がっている動画資料を参考にしながら指導のポイントを押さえたりしながら、探り探りで生徒たちの指導に当たりました。