「車内で犯人の荒い息づかいを感じ、恐怖で…」インドネシア人女性が日本で体験した生々しい痴漢被害〈「CHIKAN(痴漢)」が不名誉な国際語に〉
昨今、好調なインバウンドが続くなか、イギリスやカナダでは日本への渡航の際に「CHIKAN(痴漢)」に注意するよう情報発信されているという。この不名誉な国際語となりつつある痴漢問題について、外国人観光客への影響を考える。 【画像】日本で痴漢被害に遭ったサリさんと友人たち
「CHIKAN」が不名誉な国際語になりつつある現在
今年7月に内閣府が発表した調査結果によると、日本の若者の10人に1人が電車内や公共の場で「痴漢行為」の被害に遭っていることがわかったという。 日本において痴漢は深刻な社会問題となっているが、海外でもその認知は広がっている。 フランスでは「TCHIKAN」というタイトルで、日本人女性が中学生時代から6年間毎日痴漢被害に遭った体験談を記した書籍が話題を呼んだ。 いまや不名誉な国際語として認知されつつある「CHIKAN(痴漢)」。今回、来日した際に電車内で痴漢被害に遭ったというインドネシア人女性に話を聞くことができた。
“憧れだった日本”でインドネシア人女性が体験した電車内での痴漢被害
サリさん(仮名・24歳)は、人手不足の著しい産業で一定以上の技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れるための在留資格である「特定技能ビザ」を取得し、昨年の6月に来日。現在は東京の飲食店に勤務しているという。 学生の頃から、日本のアニメや漫画などが大好きだったそうで、今回の来日も「とても楽しみにしていた」と語るサリさん。 そんな彼女が“憧れの国・日本”で体験した生々しい痴漢被害について、当時の状況を語ってくれた。 「被害に遭ったのは今年の3月あたりでした。そのときは同じくインドネシアから来ていた友人たち含めて4人ほどで東京観光をしていたんです。 大好きなアニメグッズがたくさん売っている秋葉原へ行く途中の電車で、乗車したのはだいたい朝の9時くらいで、車内は人との距離がだいぶ近く、満員電車とまではいきませんが、かなり混んでいる状況でした。 友人たちとはぐれないようにしながら、座席の目の前のつり革につかまっていたところ、突然後ろから太ももやお尻のあたりを触られたんです。でもそのときは、気のせいだと思ってあまり気にしませんでした」 触られたことに対して最初は特に気にならなかったというが、友人はその状況を隣で目撃し、不審に感じたようだ。 「その状態のまま2駅分くらい乗り過ごして車両を降りたのですが、犯人も一緒の駅で降りたんです。隣で痴漢の様子を目撃していた友人は仕返しとして、降りる直前にその犯人の足を踏んでくれました。犯人は特に気にも留めずに、そのまま立ち去りましたが…。 電車を降りてから友人に痴漢について指摘され、そのときにハッキリと自分が触られていたことを自覚しました。おそらくショックで無意識に気づかないフリをしていたのかもしれません。 友人に指摘されてから触られていた状況を思い返してみると、たしかに背後から犯人の荒い息遣いを感じていて、あとから恐怖心を覚えました。本当に気持ち悪いなと思いました」 当時の状況を思い出すのはつらいはずだが、今回の取材に対してサリさんは、そんな気持ちを隠すかのように笑顔で対応してくれたことが印象深く、胸が痛くなった。 日本の文化が好きで、日本に夢を持って来日した彼女のような外国人にも、実際に痴漢の魔の手は伸びているのだ。