「車内で犯人の荒い息づかいを感じ、恐怖で…」インドネシア人女性が日本で体験した生々しい痴漢被害〈「CHIKAN(痴漢)」が不名誉な国際語に〉
痴漢発生の根本原因は日本特有の“満員電車”
痴漢問題をはじめとする犯罪心理学について詳しい筑波大学教授の原田隆之氏に、日本における痴漢の発生原因や、海外における痴漢の実情について話を聞いた。 「『CHIKAN』というワードが世界に広く知られているように、日本の痴漢問題はかなり深刻で、その根本原因の1つは、単純な物理的なことで、日本特有の異常な『満員電車』です。特に都心の満員電車は世界的に見てもすさまじいほどの混雑具合です。 私はかつてアメリカのロサンゼルスに住んでいましたが、移動手段として車をメインに使う地域ですので、痴漢行為など起こりようもなく、日本で痴漢が多発していると聞くと多くの人が驚きます。 また、フランスで出版された日本人の痴漢体験談の書籍が話題になったのも、それだけ被害が少ないからだと言えるのではないでしょうか。 ただ日本だけでなく、最近では他のアジア諸国やヨーロッパの都市部でも痴漢被害が増えているという話も聞きます。 満員電車だけでなく、クラブや音楽フェスなどの混雑した場所でも、痴漢行為が広がっている傾向があります」(原田氏、以下同) 訪日外国人観光客が増える今、日本の満員電車がもたらす“CHIKAN”の実態が世界にも徐々に知られていき、痴漢に馴染みのない外国人に衝撃を与えているのだ。 では、加害者はどういった心理から痴漢行為に走るのだろうか。 「痴漢の原因は、もちろん満員電車だけではありません。心理的にみると、日本人の場合、痴漢被害に遭っても、恥ずかしいという気持ちや恐怖心などを感じる人が多く、ほとんどの人が警察に通報しないのです。 加害者は、こうした被害者の心理に乗じて痴漢行為を行うため、自分の犯罪行為が露呈するリスクを感じにくい。 しかし日本を訪れている外国人となると、文化的・社会的背景などの違いから痴漢に対してどういった反応をされるのか、加害者は予測することができないと感じます。そのため、日本においては外国人よりも、通報の危険性の少ない日本人のほうが狙われやすいと考えられるでしょう」 2024(令和6)年3月に内閣府が発表した「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」によると、痴漢に対する反応として「とっさのことで何もできなかった」(42.7%)が最も多く、次いで「怖くて体が動かなか った」(32.5%)、「我慢した」(30.3%)などが上位の理由となっている。 サリさんに、インドネシアでは痴漢に対してどういった反応をする人が多いのか聞いたところ「ショックを受けて、怖くて動けない人が多いと思います」と答えてくれた。 国によっては、声を上げて周囲に助けを求める人が多い国もあるだろうが、やはり痴漢は被害者に大きなショックを与える重大な犯罪であることは間違いない。 ――日々多くの日本人も被害に遭っている日本の痴漢問題。このまま放っておけば、日本のマイナスイメージを世界に与えるだけでなく、サリさんのような純粋に日本の文化を愛する外国人たちの被害者も増やしてしまうことになるかもしれない。 取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio
瑠璃光丸凪/A4studio