売れ残る物件の特徴とは? 資産性が下がる「リノベーション」の落とし穴
細部までこだわったリノベ物件は高く売れるのか?
資産性を極力落とさずにリノベーションするポイントも押さえておきましょう。基本的に、リノベーションは自分のライフスタイルに合わせて行えばいいのですが、こだわりを詰め込みすぎると、かえって市場流通性が低下する恐れがあります。 たとえば、人気のアイランドキッチン。こだわって作る人が多い一方で「アイランドキッチンは使いづらい」という意見も根強いもの。よって、アイランドキッチンにこだわると、市場流通性が大きく下がる可能性があります。 50㎡以上あるのにワンルームのような極端な間取りも敬遠されます。物件を探す際には物件情報サイトで検索条件を設定しますが、そのときに「専有面積50㎡以上」、間取りは「ワンルーム」で物件を絞り込む人はあまりいないでしょう。 そのため、多くの人の目に触れづらくなり、売れにくくなっていくのです。さくら事務所のグループ会社、らくだ不動産でもこのような物件の売却相談を受けましたが、妥当な価格だったにもかかわらず、なかなか売れなくて苦戦したことがあります。 過剰に広いワンルームのようにその場所で生活することを想像しにくい物件よりも、ここが寝室、ここがリビングでソファを置いてくつろぐ場所、ここが子ども部屋──などという具合に、わかりやすく生活風景が思い描けるような物件のほうが、売れるのは早くなります。 加えて、市場流通性が高くなるのは、やはり可変性のある物件です。仮に広いワンルームだったとしても、簡単に壁を取り付けて部屋を仕切れるスライディングウォールを付けられるようにしておき、必要に応じて二部屋に分けられるようにしておけば、引き合いは強くなるでしょう。 一方で、多くの人に刺さりそうなコンセプトがあることも売りになります。ちょっとしたスペースに書斎を作って「ワークスペース」のある物件であることを売りにする。狭くても書斎を持ちたいというニーズは多いので、目を付けられる可能性は高まります。 逆に、コンセプトを明確にせず、中途半端なサイズの部屋を物置代わりにしていて、何の説明もなく売り出すと、「これ、何の部屋?」「もったいない間取りなのでは?」という印象を与え、売れづらくなってしまいます。 昔は収納が少ないマンションも多くありましたが、今は収納が充実していることもマスト。自己流にリノベーションすると収納が少なくなることがままありますが、それだけで売れにくくなるのは必至です。 生活動線も重要です。たとえば、キッチンと脱衣所、洗面所がつながっていて回遊できるような間取りや、すべての水回りが一直線上にあり、移動がしやすい間取りだと、家事動線としては秀逸。逆に動線が複雑だと、微妙に毎日の暮らしが不便になることが容易に想像できるため、やはり敬遠されてしまいます。 意外と考えない人が多いのですが、リノベーションする際には周囲の住戸への配慮も忘れてはいけません。たとえば下の階の寝室の真上、もしくは隣の部屋の寝室に接する部屋に子どもがドタドタ走り回るような部屋を持ってきたら、騒音で苦情が来るリスクが高まります。基本的には下の階のことを考えるなら水回りの上に水回り、リビングの上にリビング、と揃えたほうが無用なトラブルを生みにくいでしょう。 また、今後増えてきそうなのがタワマンを買ってリノベーションするケースです。タワマンのリノベーションで気をつけたいのは、業者選びです。 タワマンには、普通のマンションとは異なる特性がいくつもあります。たとえば住戸間の壁には、軽量化のためにコンクリートではなく乾式壁が採用されています。石膏ボードの間にグラスウールを挟んだ壁で、防音性は一定保たれますが、どうにかして破壊しようと思えば、破壊できてしまう程度の強度です。 しかしタワマンに不慣れな業者だと、コンクリート壁と同じような感覚で作業をしてしまい、壁を破損したり、隣の住戸に被害を及ぼしたりした事例も。 加えてタワマンは搬入経路が複雑だったり、管理規約や使用細則で定められているルールが複雑だったりするケースもありがちです。高層階だと工事期間中エレベーターでの移動に手間がかかり、ずっとエレベーター一基をふさいで住民に苦情を言われることもあるかもしれません。 今後、タワマンのリノベーション案件は加速度的に増えると考えられます。慣れない業者が工事をするともめ事が頻発し、大きな問題になることも考えられるのです。
長嶋修(不動産コンサルタント),さくら事務所