海外メディアは人種問題に抗議行動を起こした大坂なおみのストレスを懸念「精神をすり減らしエネルギーに衰え」
テニスの世界ランキング10位の大坂なおみ(22、日清食品)は28日(日本時間29日)、ニューヨークで行われたウエスタン&サザンオープンの準決勝に出場し、エリーズ・メルテンス(24、ベルギー)に6―2、7―6でストレート勝ちした。ウィスコンシン州で起きた警官による黒人男性銃撃事件に抗議するために一度は、棄権を表明したが、その抗議行動に賛同して27日の試合の開催を中断した大会主催者と協議した上で、棄権を撤回、この日の準決勝に出場した。海外メディアも社会的なメッセージを発した大坂の準決勝の戦いに注目した。 ニューヨークタイムズ紙は「大坂の抗議が大会の一時中断につなげた後、コートに戻る」との見出しを取り、「社会正義のプレー中断の後、大坂は人種差別についてテニス界で広い議論を呼ぶために試合放棄を望んだウエスタン&サザンオープンの準決勝で勝利を収めた」と伝えた。同記事も、大坂が「拳を握りしめる絵」と「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」の文字が入ったTシャツで入場したことを紹介。 「彼女はパワフルなサーブとフォアハンドで試合の最初を支配した。この試合の第2ゲームでベースラインからの高い打点のウィナーを放って流れをつかんだ。だが、大坂は勝利を収める前に第2セットで不安定さが増した」と試合を評論。 さらに「大坂はファーストサーブに苦労し、メルテンスにパワーとスピンで対応された第2セットは完璧な試合からは程遠かった。大坂は、彼女のサーブを3度落とし、ファーストサーブをわずか50%しか成功させなかった中で19度のブレークポイントを防いだ。精神をすり減らした24時間の後、大坂のエネルギーが、だんだんと衰えていくのが見えた。フラストレーションが高まり、コートにラケットを叩きつけ、繰り返し足をぴしゃりと叩いた」と続けた。 そして、「サービスウイナーの後、(勝利を)喜ぶこともなく、静かにネットに歩み寄ってメルテンスとラケットを合わせただけだった」とレポートした。 英国のガーディアン紙は「大坂なおみが“ストレス”をしばし忘れ、メルテンスを破り、アザレンカとの決勝をセットアップ」との見出しを取り、「アフリカ系米国人に対する警察の暴力が続けられることへの抗議のため、当初準決勝の棄権を表明。その後、再び参加することでテニス界や世間をさらに広く揺るがせた大坂は、金曜日に彼女のテニスが自身の信念と同様に力強いものだということを我々に思い出させた」と決勝進出を伝えた。 記事は、大坂が入場する際に「Black Lives Matter」のTシャツを着ていたことを紹介した上で、「メルテンスは、今年ツアーで15試合に勝利しているにもかかわらず、時折、楽な相手とみなされている。メルテンスは許した21度のブレークポイントを18度守り切る卓越さを見せたが、大坂はパワーと決定力で圧倒。準決勝の終盤をコントロールした」と試合展開を伝えた。そして「この勝利は2018年に優勝し、月曜日に同じ会場で開幕する全米オープンへ向けた本番前のリハーサルになるだろう」と結んだ。