まさかの“阪神残留”発表で大山悠輔は「三浦大輔2世」になるか 巨人と阪神で4番を務めたレジェンドが「それでも“球団一筋”の選手は減る」と断言する理由
選手を尊重するファン
大山は阪神に“骨を埋める”可能性が高くなった。だが広澤氏は大山が“ミスター・タイガース”と呼ばれるかどうかは未知数だという。大山の実力という観点ではなく、今後は「チームを代表する選手」という考え自体が消滅していくかもしれないというのだ。 「昭和のプロ野球では、チームには必ず“顔”となる選手がいました。だからこそ巨人や阪神の4番は重みがあり、プレッシャーに耐えながら打席に立ったものです。ファンのヤジも現在とは比較になりません。今の弁護士なら誹謗中傷と認めてもらえる内容も少なくなかったのです。あれから30年以上が経ち、ファンは変わりました。選手に優しくなり、選手の決断を尊重してくれるようになったと思います」(同・広澤氏) 広澤氏は若い野球ファンと話をする機会もあるという。彼らは「スポーツファン」であり、「野球だけを愛するファン」ではない──。 「サッカーも野球も同じくらい熱心に観戦しているというファンは、少なくとも若者世代では珍しくありません。そしてサッカーでは海外移籍が当たり前ですし、プロ野球でもメジャー挑戦は日常的な光景となりました。大山くんがFAで巨人に移籍したら、50代や60代のファンは『隔世の感』だと驚いたでしょう。しかし若い野球ファンなら、たとえ阪神ファンであっても、『巨人でがんばってほしい』と声援を送ったと思います。そもそも今、最も人気のある野球選手は大谷翔平くんであり、日本の野球ファンが最も応援しているチームはドジャースでしょう。ファン心理は変わって当然なのです」(同・広澤氏)
キャッチャー移籍の衝撃
大谷は“ミスター・日ハム”ではないし、“ミスター・ドジャース”かどうかも分からない。更に移籍したり、NPBに戻ってきたりする可能性はある。「入団した球団に骨を埋める」という美学が消滅しつつある。 「FAの内容も変化が生まれています。私が権利を行使した頃なら、キャッチャーの移籍は論外と考えられていました。サインや投手の癖、相手チームの癖に関する情報など、キャッチャーはチームの“機密情報”に精通しているからです。キャッチャーの移籍は文字通りの頭脳流出で、完全なタブー扱いでした。それが今では甲斐拓哉くんがFAを行使し、ソフトバンクも冷静に容認しています。NPBもMLBのように移籍が普通の光景になったのだと実感させられます」(同・広澤氏) 2003年のシーズンで、阪神はリーグ優勝を果たした。ダイエー(現・ソフトバンク)との日本シリーズ第7戦で、広澤氏は代打ホームランを放ち、シリーズ最年長ホームランの記録を更新。そして阪神の敗北でシリーズを終えると、引退を発表した。